統計学を理解するにはある程度の数学の知識が必要です。近年、統計学は数学の背景のない方も使用する必要に迫られることが多くなってきました。文系の方、プログラミング畑の方、研究やビジネスで必要になる方、いろいろだと思います。こういう方が統計学を勉強しはじめると間もなく、数学的な知識不足に統計学の理解の足が引っ張られていることを感じるだろうと思います。
巷には既に数式を使わない統計本があふれています。入門段階でそういう本を読むことは有益だと思います。しかしいつまでも数学を回避しすぎると、かえって統計学の学習が非効率になるだろうと思います。数学を学ぶのは短期的に見れば迂回路で非効率ですが、長い目で見ればある程度勉強しておくとかえって近道を行くことができると思います。
統計学に限らず学問というのは要するに一種のコミュニケーションだと思います。コミュニケーションには”言語”が必要です。ここでの言語の中心は日常言語、我々の場合は日本語ですが、数式というもう一つの特殊言語を上手に活用すれば、日本語と補いあってコミュニケーションを促進してくれるわけです。
とはいえ数学というのは膨大な言語体系です。それを専門にして一生勉強してもとても全範囲をマスターできるようなものではないでしょう。日本語と同じです。あらゆる学問を日本語で語ることができますが、自分にわかる日本語などそのうちのほんの一部でしょう。
従って、統計学のために数学を学ぶなら、必要な部分だけを効率的に学ぶ必要があります。ところが独学者の場合、数学のどの分野を学んだらいいのかすら見当がつかないと思います。私も独学者であり、わからなかったので大学教養レベルの教科書を結構な数、目を通してみましたが、今にして思うと本当に必要なエッセンスとなる分野はごく一部だと思います。
結論を言えば、統計学のために必要な数学はとにもかくにも「線形代数」です。次にある程度の「解析学(微積分)」です。数理統計学を深く極めるなら更に数学が必要でしょうが、統計学のユーザーが統計学をしっかり理解するために必要な数学ということなら、線形代数と基礎解析学で十分だと思います。
というわけで以下、各分野の具体的なオススメ本を紹介いたします。
線形代数の本
石井俊全さんという数学の本をたくさん書いている先生がおられます。相性があえば、この方の本で、線形代数と解析学を学ぶのがおすすめです。後で紹介しますが、この先生は統計学の本も書いておられ、あわせて学んでいく上で知識が統合されやすいからです。
上記の他、以下の本もおすすめです。
岩波キーポイントシリーズは全10冊ありますが、いずれも読みやすさを主眼においた教科書ですので、補強したい分野に目を通すのはよいことだと思います。
プログラミング畑の方には親しみやすいタイトルの以下の本もあります。中身は普通の線形代数+αとしてプログラミング的な内容という感じです。結構分厚いです。
解析学の本
やはり石井俊全先生の本があります。
岩波キーポイントシリーズからは以下2冊が該当するでしょう。
古典的名著として以下が有名です。分厚いですが。
統計学の本
石井俊全先生のシリーズです。モチベーション維持のためにこちらを先に読んで、線形代数の必要性を感じてから線形代数の本に進むのもありでしょう。
線形代数は純粋な数学本で勉強すると非常に抽象的で、計算方法はわかるけれど、それが現実世界でどんな意味を持っているのかわからないと思います。統計学、具体的には多変量解析というのは線形代数の現実世界の応用例の1つでもあります。従って線形代数と統計学を同時に勉強することで、お互いの意味がよりよくわかるという関係になっています。車の両輪のようなもので、どちらかだけ進めるというのはなかなか難しく、どちらかを一歩進めたら他方も一歩進めてという繰り返しが、理解を深める実は王道なのではないかと思います。
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