同義語
成長曲線モデル(growth curve model)、潜在曲線モデル(latent curve model)、潜在成長モデル(latent growth model)、マルチレベルモデリング、マルチレベル分析、階層線形モデル(hierarchical linear model ; HLM)、混合効果モデル(mixed effect model)
定義
成長曲線モデルは3時点以上の縦断データに対して、変化パターンに個体差があるかどうかを検討することを目的とした統計モデルである。
数理的には共分散構造分析の下位モデルである。具体的には「平均構造を導入した確認的因子分析モデル」である。
確認的因子分析の用語で言えば、成長曲線モデルにおける各時点のデータは観測変数であり、切片と傾きは潜在変数である。マルチレベル分析の用語で言えば、観測変数はレベル1、切片と傾きはレベル2である。以下に用語の対比を整理する。
成長曲線モデル | 確認的因子分析 | マルチレベル分析 |
各時点のデータ | 観測変数 | レベル1 |
切片と傾き | 潜在変数 | レベル2 |
成長曲線モデルでは、レベル2である切片と傾きをいずれも、正規分布に従う確率変数として扱う。この仮定によってそれぞれの平均と分散が計算可能となる。平均だけなら一般線形モデル(回帰分析、分散分析)の枠組みで推定できるため、成長曲線モデルの真の意義は分散も推定できる点にある。
切片の分散は、観測開始時点で個人のスコアが全体平均からどのくらいばらついているのかを示す。
傾きの分散は、平均的な傾きに対して、各被験者の傾きがどのくらいばらついているかを示す。
成長曲線モデルでできること
潜在因子(切片と傾き)の共分散の平均、分散、共分散を計算可能である。
潜在因子の分散の有意差を検定することができる(=切片とパターンに有意な個人差があるかどうかを検定することができる)。
潜在因子の共分散を検討することができる(=切片が高い/低いと傾きは大きい/小さいか)。
潜在因子(切片と傾き)を目的変数、説明変数とした回帰分析(パス解析)を追加できる。
測定時点は等間隔でないデータにも適応可能である(この場合、各時点からのパス係数を自由母数として推定する)。
潜在因子の変化としては1次の傾きだけでなく、2次以上(非線形)のものも考慮できる。
SEMの下位モデルであるため、適合度指標の計算や、パス解析などSEMのメリットを活かすことができる。
成長曲線モデルの制約
潜在変数+1の測定時点が必要である。この条件を満たしていない場合にはモデルに制約をかけることで解决できる場合がある(モデルに制約をかけてもあてはまりが悪化しなければ=測定不変性が確認できれば)。
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