筆者は現役の医師である。
本記事では、医学を専門としない方々が、臨床医学を知りたいと思われた時によいと思われる方法を考えてみたい。
医学はとにかく膨大な分野であるため、本当に効率の高いアドバイスをするためには何を知りたいのかを具体的にお聞きする必要がある。ここでは特にそういうピンポイントのテーマがない場合に、ざっくりと知るためによい方法を提示してみたい。
日本語で病気をざっくり知る方法
最も簡単に入手できる日本語の書籍としては医学情報科学研究所というところから出ている『病気がみえる』というシリーズがオススメである。消化器、循環器、呼吸器・・・と専門科目別に別れているため、興味のあるものを読まれたらいいだろう。
このシリーズが優れているのは、『病気がみえる』のタイトルどおり、図表が大変充実しておりビジュアルなことである。文章の方は基本的にはポイントの箇条書きであるため負担は軽い。しかし用語の説明などは結構しっかり書かれている。
初めて臨床医学を学ぶ医学生もこの本を参考にしている人は多い。ここに書かれている内容を完全に記憶していれば相当優秀な医学生であり、本のレベルは決して低くはない。ただどうししても文章の量が少ない、病気の仕組みや背景などを理解するにはちょっと物足りないが、それはそういう編集方針だから仕方ないことであろう。
なぜこうしたイメージ重視の本が優れているかというと、臨床医学の難しさ、わかりにくさというのは、数学や物理のような科目の難しさと根本的に質が違うからである。例えていうなら、臨床医学で知らない病気を学ぶことは、行ったことも見たこともない外国について生々しいイメージを脳内に作れと言われているような難しさなのである。
こういうことは活字の本で勉強するのが非常に難しい。実際にその国に住んだことのある人には当たり前であっても、体験のない人にはどうにも実感がわかないのである。逆に実体験さえあれば、当たり前のことを言っているだけであり、特に難しい話では全くない。臨床医学の難しさというのはそういう難しさである。
薬についての情報を得る方法
病院で処方される薬に関しては、医療関係者の間では『今日の治療薬』という本が事実上の標準である。毎年改定されている。
しかしこれは薬を処方する側が細かい用量などを確認するために使うのがメインであって、自分が処方された薬がどんなものかざっくりと知りたいなら「おくすり110番」というサイトで十分だと思う。ハイパー薬辞典というのがあるのでここから自分の知りたい薬を検索するのがてっとり早いであろう。
英語でプロレベルの情報を知る方法
自分や家族の病気について本気で最新の情報を得たいとか、あるいは医療訴訟に関わる弁護士さんなどが情報を入手したいというレベルのニーズであれば、UpToDateというサイトが良いであろう。ここに書いてあることが最新のスタンダートであると言ってほぼ間違いない。但し有料サイトである。ものすごくインテリで自分の病気を知り尽くしておきたい方や、仕事で必要なレベルの方が使うものであろう。
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