定義
競合リスクイベント(competing risk event)とは、生存時間分析のイベント(=アウトカム、failure)の中で、排他的な複数の原因(causes of failure)を持ちうるイベントのことのである。
競合リスクイベントの存在下では、個人は複数のイベントの原因に曝露されている。
最終的なイベントの原因はそのうちのいずれか1つのみに帰着される。
競合リスクイベントにおいては、1つの原因によってあるイベントが発生すると、その他の原因によって同じイベントが起こることはありえない。
競合リスクイベントの例
例えば死亡というイベントに対して、その死因(相互に排他的とする)をも考察の対象とすれば、死因は競合リスクであり、死亡は競合リスクイベントと言える。一方で死因を全く考慮しないで死亡を考察する限り、死亡は単なるイベントである。
造血幹細胞移植(HSCT)の研究
(1) 原疾患の再発(relapse incidence, REL)による死亡
(2) 移植関連死(transplant related mortality)
競合リスクイベントに対する生存時間分析の方法
(1) 関心あるアウトカム以外の競合リスクイベントを全て打ち切りとみなす方法
この方法は「1-KM」と呼ばれる。
1-KMは原因を考慮せず、原因の如何によらず全体としてイベントが発生する確率を推定するものである。
この方法は競合リスクインベントの解析方法としては間違っているということがポイントである。
(2) 各競合リスクイベントごとに累積発生関数(cumulative incidence function)を求める方法
各競合リスクイベントごとに発生確率(cumulative incidence function : CIF)を推定する。
CIFを使用することで各原因ごとの競合リスクイベントの発生確率を求めることが出来る。これはイベントの発生確率を、各原因別の発生確率に分解したものである。逆に言えば、競合リスクイベントごとのCIFを全競合リスクに関して合算したものは、1-KM法で求めた確率と等しい。
累積発生分析において予後因子の統計的有意性を検定する場合に使用すべき手法の1つがGray’s test(グレイの検定)である。
実際の解析でどうするか
生存時間分析においては、イベントと打ち切りを定義する。この打ち切りの内容を吟味してそれが競合リスクイベントである場合には、競合リスクイベントとして解析を行わなず、1-KMで解析をすると間違った結果を招くということである。なぜなら1-KM法は競合リスク発生後には、関心のあるリスクイベントが発生し得ないという制約を考慮していないからである。
参考

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