7-10 脊髄腫瘍

基礎知識

  • 脊髄はL1-2レベルで太さを減じて脊髄円錐となる
  • 脊髄の末端より尾側の脊髄腔は馬尾と呼ばれる
  • 脊髄腫瘍は脊髄から発生する腫瘍のみを指すわけではない。脳腫瘍と同様に脊髄およびその周囲にある組織から発生する腫瘍の総称である。
  • 原発咳清水腫瘍の発生頻度は年間人口10万人あたり1-3人。原発性脳腫瘍の1/5-1/10程度であり極めてまれな疾患。
  • 脊髄腫瘍は組織型が多彩。
  • 脊髄腫瘍は小児に多い。成人対小児比は原発性脳腫瘍で20:1、原発性脊髄腫瘍で5:1である。
  • 脊髄腫瘍の組織型には特徴的な年齢分布はない。解剖学的発生部位と組織型には密接な関連がある。
  • 脊髄腫瘍は病理分類の他に、解剖学的な発生部位によって分類される。
    • 髄内腫瘍(intramedullary tumro)
    • 硬膜内髄外腫瘍(intradural extramedullary tumor)
    • 硬膜外腫瘍(extradural tumor)
  • 脊髄腫瘍の症状は病変の発生部位および範囲によって特徴付けられるが、初発症状は共通していて疼痛が最多である。

  • 初発症状の疼痛は共通しているが、症状の進行パターンは、腫瘍の発生部位・進展範囲・病理組織型によって異なってくる。

  • 髄内腫瘍
    • 半数以上が疼痛で発症(限局性疼痛が多い)
    • 神経症状を伴って診断されることが多い
    • 神経症状としては病変レベルの脊髄からより下位の脊髄症状に進行していく
    • 実際に生じることはまれであるが特徴的な神経症状として、sacral sparingや宙吊り型感覚障害などがある。(脊髄中心部から障害された場合に発症)
  • 硬膜内髄外腫瘍
    • 神経根圧迫による電撃痛や放散痛が腫瘍存在部位のデルマトームに一致して生じることが多い
  • 硬膜外腫瘍
    • 脊柱管周囲の骨や靭帯などの局所的な疼痛で発症 → 脊柱管内申点に伴い進展した部位による症状を呈する
  • 容積効果 : 脳では照射容積を小さくすれば耐容線量が高くなることが広く知られている。これを容積効果と呼ぶ。

+ 耐容線量: 頚髄~腰髄は40-46Gy/20-25Fr。脊髄円錐や馬尾:50-60Gy/25-30Fr

  • 脊髄病変の手術例で非腫瘍性病変が4%を占めたとの報告あり

病期分類

  • 硬膜外腫瘍の一部(椎骨や周囲組織からの原発性骨軟部腫瘍)のみTNM分類あり。その他はTNM分類なし。

発生部位別の腫瘍の病理診断の頻度

病期分類(髄内腫瘍)

  • 神経膠腫が90%(うち50-60%が上衣腫、30%が星細胞腫)。血管奇形疾患(=血管芽細胞腫、海綿状血管腫、動静脈奇形)が5-10%。
  • 小児では 70-90%が星細胞腫(うち80-90%がjuvenile pilocytic astrocytoma、fibrillary astrocytomaなどのWHO GradeⅠ/II。maglinnant gliomaとされるWHO GradeIII/IVのanaplastic astrocytomaやglioblastoma multifomerは10%程度。)
  • 成人ではmalignant gliomaの割合が小児の2-3倍高く、星細胞腫の25%を占めるとの報告もある。

病期分類(硬膜内髄外腫瘍)

  • 神経鞘腫と髄膜腫を合わせて90%程度(但し脊髄円錐部からの終糸の上衣腫を除く)
  • 頭蓋内では髄膜腫が多くを占めるが、脊髄では神経鞘腫が2-4:1の割合で多い。
  • 非原発性病変として髄芽腫、胚細胞腫、悪性リンパ腫などの脊髄クモ膜下腔への播種性病変がある。

病期分類(硬膜外腫瘍)

  • 脊椎骨原発のものと脊柱管内硬膜外を首座とするものに大きく分けられる。

治療方針

  • 脊髄腫瘍の中で発生頻度の高いものは、低悪性度上衣腫、低悪性度星細胞腫、髄膜腫、神経鞘腫などである
  • 脊髄耐容線量の低さから、通常のRTでは根治は困難。

治療方針 – 髄内腫瘍 – 上衣腫

  • 低悪性度上衣腫で全摘できた症例は手術のみで局所制御/長期予後が期待できるため、術後照射は不要と考えられている
  • 低悪性度上衣腫で術後残存症例ではPORTを検討するが、再手術可能な症例も少なくないこと、小児の場合脊椎発育障害の問題などがあるから、即時照射ではなく、慎重な経過観察の上、腫瘍の再増大時や再発時に治療開始するという選択肢もある
  • 高悪性度上衣腫では腫瘍全摘の可能性はほぼないため、原則としてPORTを検討する

治療方針 – 髄内腫瘍 – 星細胞腫

  • en blockで全摘できる可能性があるのは juvenile pilocytic astrocytoma (WHO GradeⅠ)のみ
  • en blockで全摘可能であったjuenile pilocytic astrocytomaは術後照射の必要性は乏しい
  • anaplastic astrocytomaやglioblastoma multiformeの場合、姑息対照的な治療の意味あいが強いが、原則として術後速やかにPORTを検討すべき

治療方針 – 硬膜内髄外腫瘍

  • ほとんどが良性の神経鞘腫と髄膜腫のため、ほとんどの場合、全摘可能。
  • 硬膜内髄外腫瘍でRTを検討するのは、神経鞘腫では病理組織学的に悪性かつ、手術による摘出不能や術後腫瘍残存例である。

  • 髄膜腫でも同様に、病理組織学的に悪性かつ、手術による摘出不能や術後腫瘍残存例でRTを検討する

治療方針 – 硬膜外腫瘍

  • 転移性骨腫瘍と骨軟部腫瘍が多いため、その治療方針に従う。

放射線治療

診断(治療方針) 処方線量
低悪性度神経膠腫(上衣腫と星細胞腫) 40-46Gy/20-25Fr/4-5w
高悪性度上衣腫(anaplastic ependymoma) で全中枢神経照射を行う場合 28-36Gy/14-20Fr → boostで総線量 45-50.4Gy/23-28Fr/5-5.5w
anaplastic ependymomaで局所照射のみ 45-50.4Gy/23-28Fr/5-5.5w
anaplastic astrocytoma 45-50.4Gy/23-28Fr/5-5.5w
高悪性度星細胞腫(glioblastoma multiforme) 希望があれば脊髄耐容線量以上の処方も検討
良性髄膜腫(術後遺残) 40-46Gy/20-25Fr/4-5w
悪性髄膜腫 45-50.4Gy/23-28Fr/5-5.5w

治療成績

  • 上衣腫 5yOS:70-95%、10yOS:60-90%
  • 低悪性度星細胞腫 5yOS:60-90%、10yOS:40-90%

有害事象

  • 急性期有害事象: 照射範囲内正常組織全てに起こる可能性あり
  • 晩期有害事象 : 脊髄耐容線量内では可能性は低い

  • 脊髄有害反応

    • 亜急性期の放射性脊髄炎。頚髄の場合にはLhermitte症候群と呼ばれる。Lheritte症候群では頸部を前屈すると、背部や下肢あるいは手指に電撃様しびれ感を生じる。頚髄の後索や後根の障害を意味する。日がy区制。
    • 晩期の放射性脊髄症は不可逆。

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