7-23 甲状腺癌

基礎知識

  • 甲状腺がんは全悪性腫瘍の1.2%
  • 甲状腺がんは女性や若年者に比較的多い

甲状腺腫瘍の組織学的分類

分類 組織型
良性 1.濾胞腺腫
2.腺腫様甲状腺腫
3.機能性甲状腺結節(Plummer病)
悪性 1.分化癌
a)乳頭癌
b)濾胞癌:微小浸潤型、広範浸潤型
2.未分化癌
3.髄様癌:散発性、遺伝性(MEN)
4.悪性リンパ腫
5.その他

組織ごとの疫学

組織液 頻度 好発年齢 男女比 予後(10年生存率)
乳頭癌 85 若年~中年 1:8 95
濾胞癌 9 若年~中年 1:8 85
未分化癌 2 若年~中年 1:2 0
髄様癌 2 若年~中年 1:2 80
悪性リンパ腫 2 若年~中年 1:2 50-70

分化癌

+ 濾胞上皮由来の悪性腫瘍は増殖パターンにより乳頭癌と濾胞癌に分類されている
+ 乳頭癌が大半である
+ サイログロブリン産生は濾胞上皮の特徴である。
+ サイログロブリンの上昇する疾患: 分化型甲状腺がん、バセドウ病、など
+ 乳頭癌と濾胞癌はヨード取り込み能を有するものがある
+ 分化型甲状腺癌の骨・肺転移ではヨード取込能を有するのは2/3にすぎない

未分化癌

  • 全甲状腺癌の2%
  • 予後不良。5生存率:0%、mOS:3-6mos
  • ヨード取り込み能なし

髄様癌

  • 傍濾胞細胞由来
  • 血中カルシトニンやCEA上昇を認めるのが特徴
  • ヨード取り込み能なし
  • 家族発症例あり。家族性多発内分泌腫瘍の1部であることがある → 家族歴聴取、副腎褐色細胞腫など他の内分泌腫瘍の検索

悪性リンパ腫

  • 慢性甲状腺炎(橋本病)に合併することが多い
  • 非ホジキンリンパ腫がほとんど

その他

  • 形質細胞腫や転移性腫瘍がごくまれに発生する

病期分類

  • 所属リンパ節は甲状腺独自の分類が用いられる(他の頭頸部がんとは違う)
  • 鎖上(鎖骨上窩)は所属リンパ節ではない → RTでは準所属的に扱う
  • 病期分類に年齢や組織型が関与するのが独特である
  • 45歳未満の分化癌はStageⅡまでしかいかない
  • 未分化癌では年齢に関わらずStageⅣ
  • 進行度よりも組織型で大きく予後が変わる(甲状腺癌、軟部腫瘍の特徴か)

治療方針

  • 分化がん → RI(放射性ヨード I-131)内服、髄様癌 → PORT、未分化癌 → 対症照射、が多い。

放射線治療(乳頭癌・濾胞癌に対するRI内服)

  • 甲状腺癌に対して唯一確立された全身治療(甲状腺癌に確立された化学療法はない)
  • I-131はβ崩壊しXe-131に変化する際、β線とγ線を放出する。半減期 8日。β線の組織内有効飛程は2mm。
  • 適応は2つ
    • 1) 高リスク甲状腺癌症例での甲状腺全摘後の術後補助療法(アブレーション)
    • 2) ヨード取り込み能を有する分化癌の遠隔転移巣の治療
  • 病巣へのヨード集積効率を高めるためには可及的に正常甲状腺組織および転移巣を摘出しておく必要がある
  • 投与量は3.7GBq~7.4GBq。American Thyroid Associationのガイドラインではアブレーションでは1.11GBq~3.7GBq
  • 入院前準備: 投与4w前 T4製剤中止、投与2w前T3製剤中止、ヨード制限食開始。投与前の血清TSH値が30μU/mL以上であることが望ましい。投与2w前からのT3製剤中止+ヨード制限食にかえて、リコンビナントヒトTSH製剤を用いることができる。
  • 投与後3日程度で体内残留放射能量が500MBq以下となりRI室から退出可能。退室基準は「患者体表面から1メートルの地点における1cm線量当量率が30μSv/h以下」
  • 急性期有害事象:宿酔、悪心・嘔吐。内服4時間で出現、24時間以内にピークとなる。投与日から数日間は制吐薬、胃粘膜保護薬を使用して予防する。唾液腺炎による耳下腺痛を訴えるここともある。ピロカルピンの有効性は確立されていない。
  • 効果判定: 全身シンチにて集積状態を確認する → 異常集積を認めない場合2回目の投与の意義は乏しい。念のため数カ月後にヨードシンチ検査を行い再投与適応なしと判断する方が良い。
  • サイログロブリン高値で放射性ヨード異常集積なしの症例については効果あり、なしの異論があり定説がない。ガイドライン上は適応あり。
  • 異常集積あるの場合、半年~1年間隔で反復投与する。反復投与すると治療効果の低下や晩期有害事象の増加をもたらすことがある。
  • CTにて肺転移陰性でシンチで陽性のものはRIのよい適応

放射線治療(乳頭癌・濾胞癌に対する外照射)

  • 確立した治療ではないが、50Gy/25Fr-60Gy/30Fr程度で行われることが多い

放射線治療(髄様癌に対する外照射)

  • 組織学的残存・被膜外浸潤・リンパ節転移陽性例では局所制御率が向上したとの方向もある(中央値 60Gy)

放射線治療(未分化癌)

  • 姑息手術、外照射、化学療法などが対症治療として行われることが多い

放射線治療(悪性リンパ腫瘍)

  • 侵襲的手技は生検のみ
  • 治療はRTないしケモが主体となる唯一の甲状腺悪性腫瘍

有害事象

  • 精子減少。相投与量 5.5GBq以下では精子減少なし。13GBq以上では減少の可能性あり。
  • 早発閉経(45歳以前にRI内用療法をうけると閉経が1.5年早まる)。奇形発生率には影響なし。
  • 投与前の妊娠の有無の確認が必要。投与後4ヶ月は妊娠や授乳を避ける。
  • 多発肺転移例では肺線維症
  • 若年症例では二次発がん。女性生殖器(RR 2.2)、中枢神経(RR 2.2)、白血病(RR 2.5)など。
  • いずれの障害も積算線量と相関する

コメント