6-16 RI療法

基礎知識

  • RI療法に使用可能な放射線にはα線、β線、オージェ電子があるが、日常臨床で用いらているのはβ線のみ
疾患 RI療法
甲状腺癌 131I内用療法
褐色細胞腫・神経芽細胞腫などの悪性神経内分泌腫瘍 131I-MIBG療法
悪性リンパ腫 90Y標識抗体CD20抗体放射免疫療法(ゼヴァリン)
骨転移性疼痛 89Sr(メタストロン)
  • RI療法は分子標的治療であるが、通常の分子標的治療に加えて製剤の病巣集積をシンチで確認できるメリットがある

甲状腺分化癌放射性ヨード内用療法

  • 甲状腺分化癌(即ち乳頭癌、濾胞癌)が適応。分化癌はヨード摂取能を有することが多いため適応となる。分化癌以外には適応なし。
  • 甲状腺悪性腫瘍には、分化癌のほか、C細胞(=カルシトニン産生細胞)から発生する髄様癌、未分化癌がある
  • 髄様癌は131I-MIBGの適応
  • 甲状腺分化癌の70%がヨード摂取能を保持する。30%は欠落しており、このような例ではRI療法の効果を期待できない。
  • 分化癌のヨード摂取能は正常甲状腺組織に比べると極めて弱いものであり、従ってRI療法前に正常甲状腺組織の廃絶(全摘or準全摘)が必要となる。
  • がん細胞へのヨード取り込みは(正常細胞同様)TSH依存性である。治療前にTSHが30μU/ml以上に上昇していることが治療に必須とされる。
  • TSH上昇を作るための準備

  • 内用療法の1ヶ月前: 半減期の短い(約1日)T3製剤に変更。X線造影剤、イソジン、ルゴール他ヨード含有医薬品を中止する。

  • 2週間前にT3製剤を休薬する、ヨード制限食開始。
  • rhTSH(recomibinant human TSH)を使用すればこのような手間は不要であり、甲状腺機能低下症のリスクもない。

適応1 ablation

  • 全摘後のわずかな残存正常甲状腺組織 = thyroid bed を除去する)。微小病巣の消去および腫瘍マーカー(サイログロブリン)の特性向上
  • II-III期分化癌ではablationにより治療後30年間における再発、癌死が低下する
  • ablation対象 : 明確な定義はないが、1.5cmを超えるもの、45歳以上、多発性病巣、腺外浸潤、脈管浸潤、リンパ節転移、全摘後サイログロブリン高値、男性
  • 組織型では、広範浸潤型濾胞癌、高細胞型乳頭癌、びまん硬化型乳頭癌、円柱細胞癌など臨床的にaggressiveな組織型、索状、充実状、島状、硬性浸油などの所見のある低分化癌ではより積極的に考慮

適応2. リンパ節転移、局所残存・再発、肺・骨などの遠隔転移の制御

  • 局所再発、リンパ節転移: 形態画像で認められるような大きさの場合、最も望ましいのは外科的切除。RI療法は外科手術の適応とならない場合や術後補助として用いるのが原則。但しRIで著効する例もある。
  • 肺転移 : 微小肺結節で131I集積が認められる場合(かつ形態画像で病巣認識できずシンチでのみ確認できる状態)が最もRI療法の効果が期待できる。治癒率 30-80%。若年者、微小結節の方が効果高い。
  • 単発骨転移: 手術が望ましい。
  • 脳転移 : 外科、外照射などが望ましい。脳での131I集積は不良。

トレーサースタディ

  • 診断量(5-10mCi)の131Iでヨード集積を確認する検査を「トレーサースタディ」と呼ぶ。
  • トレーサスタディ直後に治療量投与すると、集積しなくなってしまうことがある。この現象を「stunning」と呼ぶ。
  • 逆にトレーサースタディ陰性でも治療131Iが集積することも有る。
  • 以上より、トレーサースタディはむしろ避けた方がよいと思われる。

安全性・副作用

  • ホルモン休止にともなう甲状腺機能低下症状、放射線宿酔、放射線唾液腺炎(唾液腺腫脹・疼痛)などが生じる。
  • 甲状腺機能低下症 → 便秘 → 放射線宿酔増悪の流れがあるため、治療前から下剤を併用する。
  • 宿酔、唾液腺炎は早い場合投与初日から出現する。宿酔は投与3日頃には軽快することが多い。
  • 唾液腺の疼痛、腫脹にはNSAID、ステロイド適宜使用。
  • 放射線肺炎はまれ

経過観察

  • ヨード集積同様Tg産生もTSH依存性であるため、甲状腺ホルモン補充中の値とRI治療中の値を直接比較出来ないことに注意。
  • TSH上昇時のTgが低値かつ131Iシンチで甲状腺床のみ描画の場合 → 寛解と判断する
  • 肺転移などへ131I集積が場合 → 半年~1年後に再治療を考慮
  • Tg高値にも関わらず形態画像、シンチで残存病巣確認できない場合 → ヨード摂取能喪失した残存腫瘍を示唆 → RI療法終了し経過観察
  • 再発は、頸部リンパ節、肺転移が多い。(頸部US、頸胸部CTでフォロー)

退出基準

(1) 投与量 or 体内残存放射能量 (500MBq)
(2) 体表面から1mの距離で実効線量 1μSv/h
(3) 但し線量拘束値として公衆1mSv・介助者5mSVを超えない線量である担保が取れれば(1),(2)に従わなくてよい

  • 外来30mCiによるablationが可能になる予定

悪性神経内分泌腫瘍に対する131I-MIBG内用療法

  • 神経内分泌腫瘍 : 胎生期の外胚葉性細胞集団である神経堤由来の腫瘍の総称。褐色細胞腫、傍神経節腫、神経芽細胞腫、甲状腺髄様癌、カルチノイド、膵内分泌腫瘍(インスリノーマ、ガストリノーマなど)が含まれる。
  • 神経内分泌腫瘍はノルエピネフリンの細胞内摂取が特徴の1つ。131I-MIBGはノルエピネフリンと類似挙動する。
  • 131I-MIBGは国内製造されていない。ハンガリーから個人輸入し混合診療として行う。
  • 適応 : 手術不能例、他治療が無効である転移病巣・再発病巣
  • 131I-MIBGの投与24時間前から投与後10日間は無機ヨード(ルゴール、ヨウ化カリウム)を投与する。(体内で遊離した131Iの甲状腺集積を防ぐため)。ちょうど甲状腺分化癌と逆の処理。
  • 投与量 : 3700-7400MBq(100-200mCi)
  • 治療効果 : 標準投与量では腫瘍縮小効果発現率は15-30%、完全寛解は数%。カテコラミン減少や自覚症状の緩和を含めると60%前後。
  • 内用療法における投与量決定臓器は骨髄。骨髄耐容線量は全身線量で200cGy。
  • 副作用 : 宿酔(但しナウゼリン、プリンペランは昇圧誘発リスクあるため禁忌)。骨髄抑制(投与後6-8wでnadirが多い)。甲状腺機能低下症。放射線唾液腺炎。
  • 131Iは高エネルギーγ線を放出する。90Y、89Srはβ線のみ。

ゼヴァリン放射免疫療法(radioimmunotherapy)

  • リツキサン(キメラ抗体)と異なりゼヴァリンはマウス抗体そのもののため、抗抗体(human anti-mouse antibody/ HAMA:ヒト抗マウス抗体)が産生されるため、同一患者への複数回投与は考慮されていない
  • β線内用療法の特徴の1つにcrossfire効果がある
  • ゼヴァリンは純β線核種のため、画像化には90Yと類似性を有するγ線核種である111Inを使用する
  • 適応 : 化学療法または抗体療法の治療後に再発あるいは難治性の低悪性度or濾胞性orマントル細胞リンパ腫
  • ゼヴァリン投与前に抗CD20キメラ抗体であるリツキサンを投与する(生理的な抗体分布を予め飽和させ、ゼヴァリン病巣集積の改善を目指す)
  • 111In-ゼヴァリンシンチグラム : 病巣への抗体集積の確認が目的ではない。標識抗体の体内分布に異常のないことを確認し、有害事象回避を目的とする。投与48-72時間後に撮像。
  • 投与量 : 血小板15万/mm3以上 14.8MBq/kg。血小板10万-15万/mm3 11.1MBq/kg
  • 副作用 : 投与後数週で全例に骨髄抑制が生じる。平均8wでnadir。

メタストロン(塩化ストロンチウム 89Sr)

  • 骨転移への外照射: 奏効率 80-90%、疼痛消失 40-50%
  • SrはCaの同族体であり、Srは99mTc-リン酸化合物骨シンチで描画される部位に集積する
  • 89Srの生物学的半減期 正常骨では2週間、骨転移巣 100日以上
  • 適応 : 固形癌で骨シンチで多発骨転移があり疼痛部位に一致した集積増加がある場合(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫は除外)
  • 投与量 : 1バイアル 141MBq/3.8ml 最大投与量が141MBq
  • 効果 : 疼痛改善 70%。
  • 除痛効果は投与7-20日後に発現し数ヶ月持続する
  • 投与後1日-1週後に5-15%の患者に一過性の疼痛増悪がある
  • ビスホスホネート併用で治療効果増強する
  • 脊髄圧迫症状の回避目的への使用はダメ
  • 副作用 : 平均30%のplt低下あり。投与10-16週で回復。
  • 疼痛再発時は3ヶ月以上の間隔で再投与可能。

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