3-02 細胞レベルの生物学

  • 放射線生物学においてin vivoとin vitroではかなりのギャップがある
  • 細胞 = 核 + 細胞質
  • 核 = クロマチン(DNA、RNAなどの拡散とヒストンなどの蛋白との複合体) + 核小体(RNAと蛋白の複合体)
  • 細胞質内には細胞内小器官がある。細胞内小器官には、ミトコンドリア、小胞体、ライソゾーム、ゴルジ装置などがある
  • タキサン系薬剤は微小管の脱重合を阻害して細胞周期をG2Mに停止させる → RT増感を期待できる

細胞周期と増殖分画

  • RT高感受性 : M期(分裂期)、G2M期、G1期からS期への移行期
  • RT抵抗性 : G1期前半、S期後半、G0期 (*)mnemonic的にはG1,S,G2,Mの4文字のうち、G2/Mを感受性、その他を抵抗性
  • 線量率効果 : 通常、放射線の効果は時間あたりの線量率が高い方が大きいこと
  • 逆線量率効果 : 細胞周期(抵抗期)の存在により低線量率の効果が常に高線量率に劣るわけではないこと
  • 増殖分画(growth fraction) : 細胞周期を回っている細胞の割合。臨床ではKi-67 LI (labeling index)あるいはMIB-1 LIが用いられる
  • 増殖分画が大きい≒腫瘍が急速に増大している、しかし放射線高感受性のことが多い
  • 悪性腫瘍のKi-67LIは数%から90%以上まで様々
  • 様々な腫瘍の一般的なKi-67 LI
腫瘍 Ki-67LI
バーキットリンパ腫 99%以上
DLBCL 50%前後
膠芽腫 10-20%
  • 倍加時間 : 細胞数/細胞体積が2倍になるのに要する時間
  • 潜在倍加時間 : 細胞損失がないと想定した場合に細胞数/細胞体積が2倍になるのに要する時間
  • 細胞周期は種々のサイクリンとサイクリン依存性キナーゼ(cyclin-dependent kinase : Cdk)と呼ばれる一群のリン酸化酵素によって制御・促進されている

周囲と細胞の関係

  • 上皮性腫瘍では細胞が連続(結合)して塊(包巣)を形成することが特徴。細胞間結合には繊維性結合組織や血管などの間質細胞が介在しない。結合形式には密着結合、接着結合、デスモゾーム結合、ギャップ結合などがある。
  • 非上皮性腫瘍では個々の細胞が非連続(バラバラ)である。細胞間には間質細胞が開示することが多く、通常は上皮細胞のような明確な結合はない。
  • 上皮性でも詳細防寒などは細胞間の結合が比較的弱く、悪性リンパ腫などとともに早期から全身にひろがっている可能性が高い。
  • バイスタンダー効果 : 照射細胞から非照射細胞に影響が及ぶこと。その機序としては(1)ギャップ結合を介する場合、(2)照射細胞からでる液性物質(活性酸素、サイトカインなど)を介する場合がある
  • バイスタンダー効果の実例として、マイクロビームを照射された細胞の非照射細胞の細胞死が確認されている
  • 腫瘍コード: 腫瘍細胞集団と毛細血管の関係についての概念。酸素の拡散は血管からの距離が重要で、一般に約70μ以上離れた細胞は低酸素になる
  • 低酸素細胞には「慢性低酸素細胞」と「急性低酸素細胞」がある
  • 血管以外にも、線維性結合組織と腫瘍の関係も重要であり、その多寡によって硬癌、髄様癌などの分類も用いられる。

放射線の細胞への影響と細胞死

  • p53依存性の放射線誘発アポトーシスが有名。p53が野生型から欠失型or変異型になるとアポトーシスは極端に減少する。
  • 悪性リンパ腫、未熟な腫瘍の一部は高率にアポトーシスが誘導され、CRT感受性が高い。
  • 実臨床では放射線誘発アポトーシスの頻度は低いと考えられている。アポトーシスより分裂死、壊死の関与が大きいと考えられている。

細胞死の分類

  • アポトーシスには照射後早期に起こる間期死であるearly apoptosis(=pre-mitotic apoptosis)と、late or delayed apoptosis(=post-mitotic apoptosis)がある。
  • 実例として悪性リンパ腫の照射後翌日には腫瘍の有意な縮小を認めることがある。多くの癌腫でこのような変化を認めないことから臨床癌では早期アポトーシスの関与は小さいと考えられている。
  • アポトーシス/ネクローシスは形態学的な分類、間期死/分裂死は時期的(細胞周期的な)分類と考えられる。これらは2×2表を形成するようである。
用語 意味
間期死 interphase death 照射後細胞周期を回らず(分裂せずに)起こる細胞死 照射後早期におこるアポトーシス、極端な打線量照射後の細胞死
分裂死、増殖死 mitotic death 照射後細胞周期を周り(分裂に関連して)起こる細胞死 多くの腫瘍の通常線量照射後の細胞死
プログラム細胞死 programmed cell death 遺伝的にプログラムされた能動的な細胞死 アポトーシス
非プログラム細胞死 Non-programmed cell death 遺伝的にプログラムされていない受動的な細胞死 大部分の壊死(?)
アポトーシス apoptosis 代表的なプログラム細胞死で特徴的な形態を示す。DNA損傷などで開始される多くのシグナル伝達が関与する。
ネクローシス(壊死) necrosis 代表的な非プログラム細胞死で特異的な形態は乏しい。種々の原因で生じ、通常、シグナル伝達は関与しない。

Bergonie-Tribondeauの法則とその周辺

  • 放射線感受性の機序はまだ不明のことが多い。
  • 効果予測試験(predictive assay) 例えばin vitroで2Gy照射後の生存率であるSF2の割合を比較して放射線感受性を考える方法がある
  • SF2などに基づく感受性をその細胞本来の感受性という意味で内的(内因性)放射線感受性 intrinsic radiosensitivityと呼ぶこともある
  • 腫瘍はある程度、発生母地の放射線感受性を引き継ぐ。例えば造血細胞は高感受性 → 白血病、悪性リンパ腫も高感受性。骨・軟部組織は抵抗性 → 骨肉腫、軟骨肉腫、MFH、線維肉腫なども抵抗性。
  • 正常組織幹細胞はその他の分化細胞より放射線にやや抵抗性と考えられている(一時不妊からの回復や皮膚炎の改善などの機序)
  • 分裂細胞の未分化段階は放射線高感受性(不良品を直ちに壊す)
  • 細胞再生系 cell-renewal systemでは「階層モデル」と「柔軟モデル」が考えられている。
  • 階層性モデル: 幹細胞モデル
  • 柔軟モデル: 通常は分裂していないが全ての機能細胞が潜在的分裂能を持っているというモデル。肝細胞が代表。

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