『ダイヤモンド』(2016年8月号)「どう行きますか 逝きますか 死生学のススメ」

現在、死に対する社会的関心は非常に高まっていると言えるだろう。例えば大衆紙である『ダイヤモンド』(2016年8月号)は、「どう行きますか 逝きますか 死生学のススメ」と題して、2016年6月下旬に全国の30-79歳の男女、各年代約2000人ずつに死生観に関するアンケート調査を行ない、合計9602人から得た回答を記事にした。

回答者の男女比は51:49であり、平均世帯年収 559万円であった。回答者の居住地域によって全国を7ブロックに分けると、ブロック別の回答者の割合は関東甲信越(47%)、近畿(16%)、東海北陸(19%)、その他(6%前後)であった。

「自分の死について考えたことがあるか、ないか」という問に対しては、ある(64.9%)、ない(35.1%)であった。「自分なりの死生観(生と死の考え方)があるか、ないか」という問に対しては、あり(9.5%)、なし(90.5%)であった。死を「深く考えたことがある」「ある程度考えたことがある」という人に死を考えた主なきっかけを尋ね、年代別にきっかけの割合を求めた。シニア世代(60歳以上)では、身近な人と死別した(34%)、年をとった(33%)、自分が病気になった(15%)、身近な人が病気になった(5%)、自分が自殺を考えた(1%)であった。現役世代(60歳未満)では、身近な人と死別した(33%)、年をとった(18%)、自分が病気になった(12%)、身近な人が病気になった(7%)、自分が自殺を考えた(11%)であった。「重い病気で治る見込みがない場合、延命治療を希望する?」という問に対しては、希望しない(73.0%)、分からない(14.1%)、家族に判断を任せたい(9.6%)、希望する(3.3%)という結果であった。「治る見込みがない一定年齢以上の高齢者への延命治療を制限する決まりができた場合、納得できる?」という問に対しては、納得できる(53.2%)、分からない(31.6%)、納得できない(15.2%)という結果であった。「治る見込みのない病気で苦痛に耐えられなくなった場合、投薬などによる「安楽死」を希望する?」という問に対しては、希望する(62.7%)、分からない(23.1%)、家族に判断を任せたい(8.1%)、希望しない(6.1%)という結果であった。一般大衆紙でこのような特集がなされること自体、現代の日本人に死生観への関心が高いことを裏書きしている。調査結果から浮かび上がるのは、延命治療、安楽死など我が事として社会問題として、もはや誰もが避けては通れない時代に社会が進んでいる現実である。その一方で、自らの死生観を明確に意識化・言語化できていない日本人が多数いる現状もある。時代の変化に個人の言説が追いつけていないギャップが現在の日本を象徴していると言えるだろう。

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