ディグニティ セラピー(dignity therapy : DT)

定義

ディグニティ セラピー(dignity therapy : DT)とは、終末期患者を対象として、患者の尊厳に焦点をあて、彼らの心理的苦悩を緩和すること目的として行われる心理療法である。

ざっくりと言えば、ディグニティ セラピーは、患者が自分の大切な人に伝えたいと思う内容をしたためた手紙を作成する様式化された手続きである。(この手紙を「生成継承性文書」と呼ぶ。)

ディグニティ セラピーの実際

(1) セラピストが患者に対して半構造化面接を行ない、その内容を録音する。(面接は1回1時間以内で1、2回数行う。面接と面接の間には1~3日の時間を置く。)

(2) 録音から逐語録を作成する(最終面接から2~3日以内)

(3) セラピストが逐語録を編集する(生成継承正文書としてふさわしい体裁を整える。逐語録作成から1~3日以内、通常作業に3~4時間を要する)

(4) セラピストが編集された逐語録全文を患者に読み上げ、患者からフィードバックを受ける

(5) 患者のフィードバックを元に逐語録を修正し最終版を作成する(患者フィードバックから1~2日以内に)

(6) 患者に最終版の生成継承性文書を手渡す

(7) 患者が自分の大切な人に生成継承性文書を手渡す/遺贈する

ディグニティ セラピーのエビデンス

DTと患者中心療法、標準緩和ケアを比較したRCTにてDT群では(1)治療が有効、QOLが改善、尊厳感情が増大、家族の見方が変化し家族にも恩恵があったと報告する割合が有意に高く、(2)精神的豊かさの向上(vs 患者中心療法群)、悲しみとうつの軽減(vs 標準緩和ケア群)において優れており、(3) 苦痛レベルでは群間差がなかった。(Lancet Oncol. 2011 Aug;12(8):753-62. doi: 10.1016/S1470-2045(11)70153-X. Epub 2011 Jul 6. Effect of dignity therapy on distress and end-of-life experience in terminally ill patients: a randomised controlled trial.)

 参考

がん患者心理療法ハンドブック

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