ボディー・スキャン(body scan)

ボディー・スキャンとは?

ボディー・スキャンはジョン・カバット・ジンの『マインドフルネス ストレス低減法』の第5章で紹介されている瞑想法である。

ボディー・スキャンとは、体を部分部分に分けて(1つの部分が1つのスキャン単位となる)、呼吸とともに各部部分を1つずつ順番に感じ取りながら、全身を観察する方法である。その名の通り、CTスキャンを自分の意識でやるようなイメージである。

具体的には以下の流れとなる。

呼吸と共に1度に1部分の感覚を感じ取る →

十分にその場所の感覚を感じたらその場所の感覚を意識から消し去る(実際には数呼吸となるだろう) →

次の部分に進み以下同じことを繰り返し全身を観察する。

ジョン・カバット・ジンの提唱する観察順序は、左足~骨盤まで → 右足~骨盤まで → 骨盤~肩 → 両手同時に指先~ → 肩、のど、顔、後頭部、頭頂部である。全体で45分かけるとされている。

ジョン・カバット・ジンによれば、ボディー・スキャンは、自分の体を新たに意識する多くの方法のうちで最も効果的なものである。つまり、生きてくる内にいつの間にか身につけてしまった自分の体に対する(誤った)思い込みを捨てて、ありのままの身体に気づき、癒やしへとつなげていくための最も効果的な方法ということである。

彼の提唱するストレス低減プログラムは8週間のコースであるが、少なくとも最初の4週間では集中的にボディー・スキャンに取り組むという。その理由として、(1) 横になって行うから初心者でも深いリラックスに入りやすい (2) 体を癒やす力が高まる (3) 一つひとつの主観に注意を向ける能力を高める、ことが挙げられている。

ボディー・スキャンの具体的なやり方は、『マインドフルネス ストレス低減法』のp.119とp.139-140の二箇所に書かれている。細かい部分に少し相違があるが、ここでは参考として前者の方を引用しておこう。

まず、あおむけになって、目を閉じ、注意を体のさまざまな部分へ移動させてください。

最初は、左足の先から始めて、ゆっくりと足の付け根のほうへ注意を移動させます。移動するにつてれて生じてくる感覚を感じ取りながら、呼吸にも注意を向けます。

骨盤に達したら、右足の先に注意を戻し、同じように足の付け根のほうへ注意を移動させます。

その次は、骨盤から上に向かって胴体全体、つまり腰と腹部、背中と胸、肩へと移動させます。

次は、両手の指先に注意を集中し、左右同時に腕から肩に移動させ、首、のど、それから顔のすべての部分、後頭部、そして頭のてっぺんに注意を集中します。

頭のてっぺんに鯨(くじら)の噴水孔のような穴があいていて、そこから呼吸しているというイメージを作ってください。頭のてっぺんから入ってきた空気は、体全体を通って足の先から出てゆき、今度は足の先から入った空気が頭のてっぺんから出てゆく、一方の端からもう一方の端へ、体全体で呼吸しているというつもりになってください。

これで、ボディー・スキャンは終了します。

ボディー・スキャンに対する私見

他の瞑想と同様、ボディー・スキャンのもやり方にもバリエーションがあるようである。山下良道氏の体の微細な感覚を観る瞑想も座位と仰臥位の違いはあれ似たような主旨と思われるし、ゴエンカ式にもボディー・スキャンはあるようだ。

ジョン・カバット・ジン式を実際にやる場合には、1部位あたりに例えば3呼吸とか5呼吸留まると決めて、その部位も呼吸しているようなイメージで観察してもいいのではないかと考えている。1部位辺りの呼吸数を予め決めず、十分に感覚を感じ取れたら次に移動することにもメリットがあるだろうが、呼吸数を決めて呼吸数を数えながらやることで集中力の維持と眠気の防止効果はあるのではないかと考える。

参考文献

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