エビデンスレベルの分類

定義

エビデンスレベルの分類とは、個々のエビエンスを信頼性によって分類(格付け)する枠組みのことである。エビデンスを格付けすることはEBMの基本原則である。

エビデンスレベルの分類法は複数提案されている。

分類例(Minds)

エビデンスレベルの分類例として日本のMindsの分類を以下に示す。Mindsの分類では研究テーマごとに異なる分類を採用している。いずれも数字が小さい方がが質の高いエビデンスとして扱われる。

治療に関する論文のエビデンスレベルの分類

I システマティック・レビュー/randomized controlled trial(RCT)のメタアナリシス
II 1つ以上のランダム化比較試験による
III 非ランダム化比較試験による
IVa 分析疫学的研究(コホート研究)
IVb 分析疫学的研究(症例対照研究、横断研究)
V 記述研究(症例報告やケースシリーズ)
VI 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見

2)治療・予防、病因・害

1a RCTのシステマティック・レビュー
1b 個々のRCT(信頼区間が狭いもの)
1c all or noneの研究
2a コホート研究のシステマティック・レビュー
2b 個々のコホート研究(質の低いRCTを含む)
2c 「アウトカム」研究:エコロジー研究
3a ケースコントロール研究のシステマティック・レビュー
3b 個々のケースコントロール研究
4 症例集積研究(および質の低いコホート研究あるいはケースコントロール研究)
5 系統的な批判的吟味を受けていない、または生理学や基礎実験、原理に基づく専門家の意見

3)予後

1a 前向きコホート研究のシステマティック・レビュー。異なる集団において妥当性が確認されたclinical decision rule(CDR)
1b フォローアップ率80%以上の前向きコホート研究。単一集団で妥当性が確認されたCDR
1c 全ケースシリーズ
2a 後向きコホート研究、あるいはRCTにおける未治療対照群のシステマティック・レビュー
2b 後向きコホート研究、あるいはRCTにおける非治療対照群のフォローアップ。CDRの誘導のみ、あるいは妥当性が分割サンプルでしか証明されなかったCDR
2c 「アウトカム」研究
4 症例集積研究(および質の低い予後に関するコホート研究)
5 系統的な批判的吟味を受けていない、または生理学や基礎実験、原理に基づく専門家の意見

4)診断

1a レベル1の診断研究のシステマティック・レビュー。複数の臨床施設を対象としたレベル1bの研究で検証されたclinical decision rule(CDR)
1b 適切な参照基準が設定された検証的コホート研究、あるいは単一の臨床施設で検証されたCDR
1c 絶対的な特異度で診断が確定できたり、絶対的な感度で診断が除外できる場合
2a レベル2の診断研究のシステマティック・レビュー
2b 適切な参照基準が設定されている探索的コホート研究。CDRの誘導のみ、あるいは妥当性が分割サンプルでしか証明されなかったCDR
3a 3b以上の研究のシステマティック・レビュー
3b 非連続研究、あるいは一貫した参照基準を用いていない研究
4 評価基準が明確でない、あるいは独立でないケースコントロール研究
5 系統的な批判的吟味を受けていない、または生理学や基礎実験、原理に基づく専門家の意見

5)経済的評価

1a レベル1の経済研究のシステマティック・レビュー
1b 臨床的に適切なコストや代替案に基づいた分析、あるいはエビデンスのシステマティック・レビュー;かつ多元的感受性分析を含む
1c 絶対的に経済学的に優れていること、あるいは絶対的に経済学的に劣っていることを証明した分析
2a レベル2の経済研究のシステマティック・レビュー
2b 臨床的に適切なコストあるいは代替案に基づいた分析。エビデンスの小規模なレビュー、あるいは単一の研究、かつ多次元的な感受性分析を含む
2c 監査研究あるいはアウトカム研究
3a レベル3b以上の経済研究のシステマティック・レビュー
3b 限られた代替案あるいはコストに基づいた分析、質の低い予測データ、ただし臨床的に適切な変動を取り入れた感受性分析を含む
4 感受性分析のない分析
5 系統的な批判的吟味を受けていない、また生理学や基礎実験、原理に基づく専門家の意見

参考

福井次矢, 他編. Minds診療ガイドライン作成の手引き 2007. Minds. 2007.

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