緩和ケアと積極的治療の関係(WHO,1990)

積極的治療と緩和ケアの関係について、WHOはがん治療に投下できる資源の配分という観点から考察し、旧モデルと新モデル(先進国版と発展途上国版あり)を提示した(WHO,1990)。

原著(1)より概念図を引用します。

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以下、WHOによる解説の要約です。
緩和ケアはあまりにもしばしば無視されるか、治療法の選択肢の中でいわば”くずかご”的に扱われてきました(図2)。
そうではなく、緩和ケアはがんのケアの欠くことのできない一部としてみなされるべきだとWHOは提唱しています(図3,4)。
図3は、先進国での緩和ケアと積極的治療の統合されたあるべき姿を描いたものです。
図4は、途上国での緩和ケアと積極的治療の統合されたあるべき姿を描いたものです。
途上国では実際問題として、がん医療に投入可能な資源の制約があり、その現実の中では積極治療(費用がかかる割に効果は限定的)よりも緩和ケアの果たせる役割がはるかに大きいことを意図して描かれています。

なお、1990年当時の発展途上国の現状は以下のように描かれています。世界の半分以上のがん患者は発展途上国にいるのに、彼らがアクセスできるがん制御にむけた資源は10%にも満たないものです。特にサブサハラ・アフリカ地域においては人口3億人に対して、がんの専門家は100人もいません、と。

なお、旧モデルに見られる積極的治療と緩和治療を区切る縦線を、高野利実は「絶望の壁」と呼んでいる(2)

参考

(1)

クリックしてWHO_TRS_804.pdfにアクセス

(2)

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