7-30-1 縦隔腫瘍 – 胸腺腫
ざっくり言うと
- 処方線量は予防 40Gy/20Fr,根治/救済 60Gy/30Fr(胸腺癌、胚細胞腫瘍) or 50Gy/25Fr(胸腺腫)である。
胸腺腫の基礎知識
- 縦隔腫瘍はまれであるが組織型は多彩。胸腺腫、胸腺癌、神経原性腫瘍、胚細胞性腫瘍、悪性リンパ腫、縦隔甲状腺腫、胸腺カルチノイド、間葉系腫瘍など
- 縦隔腫瘍の30-40.8%
- 穏やかな経過であるが悪性腫瘍であり、浸潤、転移する
- 胸腺腫の22-50%に重症筋無力症を合併する。治療は抗コリン剤。
- 術後に明らかな残存腫瘍がなくても、放射線治療や化学療法の追加により重症筋無力症が軽快することがある。
- 臨床病期分類は正岡病期分類、病理組織分類はWHO分類が用いられる
- 最も効果的な治療は手術である。放射線は術後照射として行われる。
- 放射線治療を明らかに省略できるのは(=適応がないのは)、正岡分類Ⅰ期(非浸潤型)で完全切除された場合と、WHO組織分類でType A or ABの時である。(Type Bは術前化学療法や術後放射線治療などの集学的治療が必要。
胸腺腫の正岡病期分類
| 病期 | 定義 | 治療方針 |
|---|---|---|
| Ⅰ期 | 完全に被包されている | 完全切除後はPORT不要 |
| II期 | 周囲の胸腺、縦隔の脂肪組織、縦隔胸膜への浸潤 | 完全切除例に対するPORTの意義はコントロバーシャル |
| III期 | 心臓・肺・大血管などの周囲臓器に浸潤 | 集学的治療が必要 |
| IVa期 | 心膜播種あるいは胸膜播種 | 手術適応なし。化学療法先行し、腫瘍縮小してからの集学的治療 |
| IVb期 | リンパ行性あるいは血行性転位 | 手術適応なし。化学療法先行し、腫瘍縮小してからの集学的治療 |
浸潤は病理診断による
胸腺腫のWHO病理組織分類
| 病期 | 定義 |
|---|---|
| A型胸腺腫 | 異型性のない紡錘形から卵円形細胞からなる |
| AB型 | 紡錘形から卵円形細胞による部分(A型)に、リンパ球の豊富な部分(B型)が混合 |
| B1型 | 豊富なリンパ球の中に類円形から多角細胞がわずかに認められる。リンパ球は幼若Tリンパ球の形質を示す |
| B2型 | B1型より腫瘍上皮細胞が多く、リンパ球は少ない |
| B3型 | ほとんどが上皮細胞からなる領域も見られる。B2型よりもリンパ球成分が少なく、随伴するリンパ球は未熟Tリンパ球 |
胸腺腫の放射線治療
- 術後照射(完全切除例/不完全切除例)、根治照射の3タイプに分けられる
- 照射野は基本的には原発巣とその周囲。全縦隔とすべきとの報告もある。
| 適応 | 処方線量 |
|---|---|
| 術後照射(完全切除) | 40Gy/20Fr/4w |
| 術後照射(不完全切除) | 50Gy/20Fr/4w |
| 根治照射 | 50Gy/20Fr/4w |
胸腺腫の併用療法
- シスプラチンを中心とした多剤併用。ADOC療法(シスプラチン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、シクロフォスファミド)やCAMP療法(シスプラチン、ドキソルビシン、メチルプレドニゾロン)の奏効率が比較的高いとされる。
胸腺腫の予後
| 正岡病期 | 5年生存率 | 10年生存率 |
|---|---|---|
| Ⅰ期 | 100% | 100% |
| II期 | 98.3% | 98% |
| III期 | 89.2% | 78% |
| IVa期 | 73.1% | 47% |
| IVb期 | 63.5% |
7-30-2 縦隔腫瘍 – 胸腺癌
胸腺腫の基礎知識
- 縦隔腫瘍の 5.2%
- 悪性度が高く、早期から局所浸潤し、リンパ節転移や遠隔転移をきたしやすい。(頻度としては胸腺腫よりまれだが、悪性度が高いのが胸腺癌)
- 正岡分類III/IV期が77-100%
- 組織型は多彩: 扁平上皮癌、類表皮癌、小細胞癌、未分化癌、肉腫癌など。
胸腺腫の放射線治療
- 術後照射(完全切除例/不完全切除例)、根治照射(リンパ節転移なし/リンパ節転位あり)の4タイプに分けられる
- 照射野は基本的には原発巣とその周囲。全縦隔とすべきとの報告もある。
| 適応 | 処方線量 |
|---|---|
| 術後照射(完全切除) | 40Gy/20Fr/4w |
| 術後照射(不完全切除) | 60Gy/30Fr/6w |
| 根治照射(リンパ節転移なし) | 60Gy/30Fr/6w |
| 根治照射(リンパ節転移あり) | 60Gy/30Fr/6w |
- 根治照射ではリンパ節転移の有無に関わらず処方線量は同じであるが、リンパ節転移なしの場合、原発巣と周囲をCTVにするのに対し、リンパ節転移(上縦隔リンパ節転移)ありの場合、縦隔+両鎖骨上から頚部もCTVに含めることを考慮する。
胸腺腫の併用療法
- シスプラチンを中心とした多剤併用
胸腺腫の予後
| 正岡病期 | 5年生存率 |
|---|---|
| Ⅰ・II期 | 88% |
| III期 | 51.7% |
| IV期 | 37.6% |
- 完全切除の有無が最大の予後規定因子
7-30-3 縦隔腫瘍 – 胚細胞性腫瘍
胚細胞性腫瘍の基礎知識
- 縦隔腫瘍の5.4% (頻度的には胸腺癌とほぼ同等)
- 好発年齢 10-30代。男性に多い(80%以上)
- 性腺外の胚細胞性腫瘍としては縦隔が多い
- 組織型が予後に重要
- 良性胚細胞腫瘍: 成熟奇形腫、未熟奇形腫
- 悪性胚細胞腫瘍: セミノーマ、非セミノーマ
胚細胞腫瘍の放射線治療
- 術後照射と根治照射に分けられる。非完全切除例は根治照射に準じる。
| 適応 | 処方線量 |
|---|---|
| 術後照射(完全切除) | 40Gy/20Fr |
| 術後照射(非完全切除) | 60Gy/30Fr |
| 根治照射 | 60Gy/30Fr |
胚細胞腫瘍の併用療法
- 精巣発生の胚細胞腫瘍と同様、シスプラチンを中心とした多剤併用が妥当。
胚細胞腫瘍の予後
- 化学療法後の予後判定としては腫瘍マーカー(AFP、hCGなど)が有用。腫瘍マーカーの正常化したものは予後良好。
| 組織型 | 5年生存率 |
|---|---|
| セミノーマ | 90%以上 |
| 非セミノーマ | 34% |

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