基礎知識
- 日本では年間 500-700例
- 下咽頭癌は全頭頸部癌の約10-15%
- 男女比 9-13:1。好発年齢:60代、50-70代で90%。
- 下咽頭はリンパ流豊富であり、リンパ節転移が多い
- 発見時に進行がんであることが多い
- 下咽頭癌は頭頸部癌の中でも生命予後不良の疾患である
Field Cancerization
- Field cancerrization : 咽頭粘膜、食道、上部気道などに高度異型性を主体とした前がん病変を伴い、発見時および治療経過中に多中心性の癌を生じやすい
- 発症リスク因子:喫煙、飲酒。臨場後部癌ではプラマービンソン症候群との関連性が高い。
- 重複癌の発生率は1年ごとに4-7%
- 初診時に 7%程度の同時重複癌あり
- 経過中に10-20%の異時重複癌が発生する
- 同時と異時の重複癌を合わせると30%弱の危険性がある
解剖
- 亜部位: 梨状陥凹(70-75%)、咽頭後壁(15%)、臨場後部(咽頭食道接合部)(10-15%)
- 梨状陥凹は三角錐を逆さまにした形状。内壁、外壁、前壁よりなる。後方は開放されており咽頭後壁に隣接する。
予後因子
| 予後因子 | 詳細 |
|---|---|
| 年齢 | 70歳以上の高齢者で予後不良(CRTなどの高強度治療に耐えられない) |
| 性別 | 女性は予後良好 |
| 部位 | 梨状陥凹癌はその他亜部位の癌より予後良好。咽頭後壁癌が最も予後不良。 |
| 喫煙 | 予後に悪影響 |
| 飲酒 | 予後に悪影響 |
| 必須栄養素不足(カロチン、ビタミンC・E、フラボノイド) | 予後に悪影響 |
| 転移病変体積 | 100cm^3を超えると予後が非常に不良 |
| 原発巣体積 | RT制御予測因子 |
- PETでのSUVが予後予測因子、治療効果判定、治療計画に有用との報告あり
合併症
- HPV感染: 下咽頭癌でのHPV陽性率は25%。予後の相関は定まっていない。
- Plummer-Vinson症候群 : 鉄欠乏性貧血、下咽頭のウェブ形成、体重減少、嚥下障害で代表される疾患カテゴリー
- 喫煙習慣 → 慢性呼吸器疾患
- 飲酒習慣 → 肝炎、肝障害
内視鏡検査
- 食道癌ではヨード散布法による表在癌の診断体系が確率しているが、ヨード散布法は粘膜刺激性が強いため頭頸部領域ではスクリーニングとしては普及しなかった。
- 近年、狭帯域光観察(Narrow band imaging : NBI)の導入により、頭頸部癌の表在癌の検出能が飛躍的に改善してきた。
病期分類
- 咽頭後壁癌は上方(中咽頭)、下方(食道)へ浸潤し、椎前筋膜、後咽頭腔へ浸潤する。腫瘤形成型多く、しばしば巨大腫瘤で発症する。
- 副咽頭間隙リンパ節は上咽頭癌、下咽頭癌においてセンチネルリンパ節的存在と考えらている。
- 8割が進行癌(=III期以上)
- 下咽頭癌は頭頸部癌の中でも遠隔転移の多い癌であり、肺が最好発部位である。
治療方針
- 早期癌 → RTを中心とした喉頭温存療法が多い
- 進行癌 → 手術が中心
- RT後のsalvage 手術、手術後のPORTいずれもある。
T1-2: 音声機能温存をねらった喉頭温存療法
- T1-2ではCRTは手術と同等の生存率
- 通常分割照射 vs 非通常分割照射(多分割照射またはSIB)(RTOG9003など) : 非通常分割照射は有意に局所制御を改善する。生存率改善の報告もあり。
- RT局所制御率: 70-100%
- N0でも全頸部への予防照射 45-50Gyが望ましい。
- N2-3症例では70Gy以上のRTでもリンパ節病変の制御は不良。
- RT後頸部郭清術は照射後早期の方が手技的には簡単であるが、治療効果判定が不十分との議論もある。
- RT後PETは8-12w後が望ましい
T3-4(切除可能)
- RT局所制御率 T3:50%、T4:30-40%
- CRTが一般的。予防域 45-50Gy、頸部高リスク領域 60Gy程度。
- T3-4では手術の方が確実な局所制御が得られると考えられている
- CRTでは喉頭の機能温存が可能であるか、機能予後評価が重要である
- 巨大腫瘍、気道破壊/高度浸潤、軟骨破壊、広範な軟部組織浸潤など → 機能予後不良のため根治手術が推奨
術後照射
- 適応基準: T4、断端陽性/近接、軟骨・骨浸潤、リンパ節転移or一定数以上のリンパ節転移(+)所見、節外浸潤など
- 微視レベルリスク領域 : 50-60Gy程度、節外浸潤/断端(+)の高リスク領域: 60-66Gy
- ケモ併用で無病生存率を改善するが、生存率は改善するエビデンスはない。
T3-4(遠隔転移を伴わない切除不能症例)
- 標準治療は定まっていない。CRTを検討
- T4b(椎前筋膜、頸動脈、縦隔浸潤)は絶対的切除不能
遠隔転移例
- 下咽頭癌の1/4がこれに該当(発見時or治療経過中)
- 緩和/姑息治療
放射線治療
- CTV subclinical 40-45Gy程度
- 頸部郭清術がRT前に施行されており、節外浸潤(+)の高リスク領域 : 60-66Gy程度
治療成績
| 病期 | 成績 |
|---|---|
| Ⅰ | 5y生存率: 30-65%、LC: 70-90% |
| Ⅱ | 5y生存率: 30-55%、LC: 50-70% |
| Ⅲ | 5y生存率: 10-40%、LC(原発巣制御率): 40-60% |
| ⅣA-B | 5y生存率: 5-30%、LC(原発巣制御率): 0-40% |
| ⅣC | 生存期間中央値 8-10ヶ月 |
有害事象(急性期)
- RT3週あたりから粘膜炎が発生することが多い
有害事象(晩期)
- 耳下腺平均線量26Gy以下であると唾液腺機能を温存可能
- 唾液腺機能は(回復可能な場合)、RT後1ー2年をかけてゆっくり回復する
- 味覚障害は数ヶ月程度で改善する
- 頸部リンパ浮腫 : RT後数ヶ月で一過性に生じるが多くは半年程度で自然消失する
- 喫煙は喉頭浮腫を増悪させる → 禁煙指導
- 喉頭浮腫の症状 : 喉頭違和感、嚥下障害、嚥下困難感、嗄声など

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