7-17 下咽頭癌

基礎知識

  • 日本では年間 500-700例
  • 下咽頭癌は全頭頸部癌の約10-15%
  • 男女比 9-13:1。好発年齢:60代、50-70代で90%。
  • 下咽頭はリンパ流豊富であり、リンパ節転移が多い
  • 発見時に進行がんであることが多い
  • 下咽頭癌は頭頸部癌の中でも生命予後不良の疾患である

Field Cancerization

  • Field cancerrization : 咽頭粘膜、食道、上部気道などに高度異型性を主体とした前がん病変を伴い、発見時および治療経過中に多中心性の癌を生じやすい
  • 発症リスク因子:喫煙、飲酒。臨場後部癌ではプラマービンソン症候群との関連性が高い。
  • 重複癌の発生率は1年ごとに4-7%
  • 初診時に 7%程度の同時重複癌あり
  • 経過中に10-20%の異時重複癌が発生する
  • 同時と異時の重複癌を合わせると30%弱の危険性がある

解剖

  • 亜部位: 梨状陥凹(70-75%)、咽頭後壁(15%)、臨場後部(咽頭食道接合部)(10-15%)
  • 梨状陥凹は三角錐を逆さまにした形状。内壁、外壁、前壁よりなる。後方は開放されており咽頭後壁に隣接する。

予後因子

予後因子 詳細
年齢 70歳以上の高齢者で予後不良(CRTなどの高強度治療に耐えられない)
性別 女性は予後良好
部位 梨状陥凹癌はその他亜部位の癌より予後良好。咽頭後壁癌が最も予後不良。
喫煙 予後に悪影響
飲酒 予後に悪影響
必須栄養素不足(カロチン、ビタミンC・E、フラボノイド) 予後に悪影響
転移病変体積 100cm^3を超えると予後が非常に不良
原発巣体積 RT制御予測因子
  • PETでのSUVが予後予測因子、治療効果判定、治療計画に有用との報告あり

合併症

  • HPV感染: 下咽頭癌でのHPV陽性率は25%。予後の相関は定まっていない。
  • Plummer-Vinson症候群 : 鉄欠乏性貧血、下咽頭のウェブ形成、体重減少、嚥下障害で代表される疾患カテゴリー
  • 喫煙習慣 → 慢性呼吸器疾患
  • 飲酒習慣 → 肝炎、肝障害

内視鏡検査

  • 食道癌ではヨード散布法による表在癌の診断体系が確率しているが、ヨード散布法は粘膜刺激性が強いため頭頸部領域ではスクリーニングとしては普及しなかった。
  • 近年、狭帯域光観察(Narrow band imaging : NBI)の導入により、頭頸部癌の表在癌の検出能が飛躍的に改善してきた。

病期分類

  • 咽頭後壁癌は上方(中咽頭)、下方(食道)へ浸潤し、椎前筋膜、後咽頭腔へ浸潤する。腫瘤形成型多く、しばしば巨大腫瘤で発症する。
  • 副咽頭間隙リンパ節は上咽頭癌、下咽頭癌においてセンチネルリンパ節的存在と考えらている。
  • 8割が進行癌(=III期以上)
  • 下咽頭癌は頭頸部癌の中でも遠隔転移の多い癌であり、肺が最好発部位である。

治療方針

  • 早期癌 → RTを中心とした喉頭温存療法が多い
  • 進行癌 → 手術が中心
  • RT後のsalvage 手術、手術後のPORTいずれもある。

T1-2: 音声機能温存をねらった喉頭温存療法

  • T1-2ではCRTは手術と同等の生存率
  • 通常分割照射 vs 非通常分割照射(多分割照射またはSIB)(RTOG9003など) : 非通常分割照射は有意に局所制御を改善する。生存率改善の報告もあり。
  • RT局所制御率: 70-100%
  • N0でも全頸部への予防照射 45-50Gyが望ましい。
  • N2-3症例では70Gy以上のRTでもリンパ節病変の制御は不良。
  • RT後頸部郭清術は照射後早期の方が手技的には簡単であるが、治療効果判定が不十分との議論もある。
  • RT後PETは8-12w後が望ましい

T3-4(切除可能)

  • RT局所制御率 T3:50%、T4:30-40%
  • CRTが一般的。予防域 45-50Gy、頸部高リスク領域 60Gy程度。
  • T3-4では手術の方が確実な局所制御が得られると考えられている
  • CRTでは喉頭の機能温存が可能であるか、機能予後評価が重要である
  • 巨大腫瘍、気道破壊/高度浸潤、軟骨破壊、広範な軟部組織浸潤など → 機能予後不良のため根治手術が推奨

術後照射

  • 適応基準: T4、断端陽性/近接、軟骨・骨浸潤、リンパ節転移or一定数以上のリンパ節転移(+)所見、節外浸潤など
  • 微視レベルリスク領域 : 50-60Gy程度、節外浸潤/断端(+)の高リスク領域: 60-66Gy
  • ケモ併用で無病生存率を改善するが、生存率は改善するエビデンスはない。

T3-4(遠隔転移を伴わない切除不能症例)

  • 標準治療は定まっていない。CRTを検討
  • T4b(椎前筋膜、頸動脈、縦隔浸潤)は絶対的切除不能

遠隔転移例

  • 下咽頭癌の1/4がこれに該当(発見時or治療経過中)
  • 緩和/姑息治療

放射線治療

  • CTV subclinical 40-45Gy程度
  • 頸部郭清術がRT前に施行されており、節外浸潤(+)の高リスク領域 : 60-66Gy程度

治療成績

病期 成績
5y生存率: 30-65%、LC: 70-90%
5y生存率: 30-55%、LC: 50-70%
5y生存率: 10-40%、LC(原発巣制御率): 40-60%
ⅣA-B 5y生存率: 5-30%、LC(原発巣制御率): 0-40%
ⅣC 生存期間中央値 8-10ヶ月

有害事象(急性期)

  • RT3週あたりから粘膜炎が発生することが多い

有害事象(晩期)

  • 耳下腺平均線量26Gy以下であると唾液腺機能を温存可能
  • 唾液腺機能は(回復可能な場合)、RT後1ー2年をかけてゆっくり回復する
  • 味覚障害は数ヶ月程度で改善する
  • 頸部リンパ浮腫 : RT後数ヶ月で一過性に生じるが多くは半年程度で自然消失する
  • 喫煙は喉頭浮腫を増悪させる → 禁煙指導
  • 喉頭浮腫の症状 : 喉頭違和感、嚥下障害、嚥下困難感、嗄声など

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