要約
背景
人生最後の1年間(last year of life; LYOL)における放射線治療の使用状況を調査した。緩和照射(palliative RT; PRT)は期待余命6週間以上の患者でよく研究されているため、最後の1ヶ月を除き人生最後の1年においてPRTの使用は一定であり、最後の1ヶ月においてはこれを支持する前向きデータが乏しいことから使用が減るという仮説を立てた。
方法
単施設で、2014/10/01-20215/09/30に死亡したがん患者のうち、人生最後の1年間に3回以上の評価を行った患者870名を対象とした。保険請求および放射線治療のデータを抽出し紐付けた。人生最後の1年で、治療意図(根治/緩和)と適応ごとに、放射線治療の使用状況を分析した。
結果
人生最後の1年間で、1/3の患者(RT365と呼ぶ)が444の部位にに照射を受けていた。これは人生最後の180日間、30日間で24.3%、8.5%に減少していた。RT365は死亡時の年齢が若く、肺がん、肉腫、移植の割合が多かった。1/4の部位は根治目的で照射されており、この割合は人生最後の1年間で一定であった。対照的に、緩和照射は超線形(supralinear)に使用されており、中でも死が近づくにつれ骨への痰甲斐性者が増えていた。
結論
緩和照射は死が近づくにつれ、骨への単回照射が増えていく傾向があった。これは終末期において進行がんにによる症状が増悪していくことと関連してるのかもしれない。極めて予後不良な患者(例:期待余命30日以内)は通常、放射線治療の臨床試験に組み入れられないため、終末期における骨への緩和照射が有効であるかどうかについて更なる研究が必要である。
導入
死の直前(典型的には14~30日)における緩和照射の利用について、単施設[7]、地域ベース[8-11]の研究があるが、死の1年前における経時的な変化を分析した研究はない。また治療意図(根治、緩和)を分解して行った研究もない。
死の1年前の放射線治療の利用を分析することにより以下2つのことが可能になると考えた。
(1) 進行がん患者の疾患の様々な段階における照射の需要と適応の予測
(2) 臨床試験で緩和照射が実施される時期と、現実世界での照射時期のズレを同定すること
結果
患者背景
870名のがん患者は、死の前の365日、180日、30日にそれぞれ290名(33.3%)、211名(24.3%)、74名(8.5%)が照射を受けていた。RT365は有意に、照射を受けない患者より若かった(表1)。RTは病変部位により様々に使用されていた。消化管、婦人科、血液がんの患者は死の前365日にRTを受ける割合が低かった。反対に、骨髄移植を受ける患者、頭頸部、肺/胸郭、肉腫、皮膚の患者は死の前365日にRTを受ける割合が高かった。死の前14日における化学療法の有無および緩和ケアに関してはRT365群と非RT365群で有意差がなかった。
RT365患者と最後のRTの時期
290名(緩和 203名、根治87名)が444の部位に、人生最後の1年にRTを受けていた。約1/4(n=105;24%)の部位が根治目的で、残りの76%(n=339)が緩和目的で治療されていた。これらの病変の半分は死の前の30-180日の間に治療されていた(表2)。死の前30日以内に治療された部位は13%に過ぎなかった。死が近づくにつれ根治目的で照射される部位は減っていた。
照射開始から死までの期間は根治目的群では165日(範囲、10-41日)、緩和目的群ででは85日(範囲、3-403日)であり有意差があった(p<0.0001)。
RTは44部位(9.9%)で完遂された。この率は根治目的(12名、11.4%)と緩和目的(32名、9.4%)で差がなかった。
根治目的で照射完遂できなかった患者の28.1%、緩和目的で照射完遂できなかった患者の8.3%は入院で照射していた。
緩和照射
部位は骨、脳・脊髄の順に多かった。
骨RT割合:死の前30日以内(45.1%)、30-180日(35.0%)、180-365%(34.3%)。
うち単回照射割合:死の前30日以内(52.5%)、30-180日(28.6%)、180-365%(32.4%)。
脳・脊髄RT割合:死の前30日以内(17.6%)、30-180日(25.0%)、180-365%(20.4%)。
死の前30日以内の照射
約1/3が何らかの症状緩和あり、1/4は症状不変あるいは増悪。
約半数(40.4%)がRT完遂できず、主な理由はPS低下(42.9%)、治療に耐えられないあるいは通院困難(23.8%)(表4)。
考察
終末期の積極的な治療をあらわす有用な指標として、死の前14日以内の化学療法、ICUでのがん死、ホスピス入院後3日以内の死がある。しかし緩和照射に関してはこのような有用な指標がない。おそらくは終末期におけるRTの有効性と最適な使用率に関する知見がないからである。
死の前1ヶ月における放射線治療の使用に関する報告にはばらつきがある:新規発見進行がん患者で19%[19]、米国がん登録で7.6%[10]、ブリティッシュ・コロンビアで5%[8]、小児単施設で2.1%[20]。
死の前1ヶ月における放射線治療の有効性に関する報告は乏しい。早いもので照射後1ヶ月からの有効性の報告がある[4,21]。オランダのランダム化試験では照射後4週間で、50%除痛、100%除痛がそれぞれ約半数と10%であった[5]が、時間経過の詳細は報告されていない。
あるアンケート調査によれば放射線腫瘍医が単回照射を行うには平均3.9(SD 2.8)週の期待余命を、10日以上の照射を行うには9.0(SD 3.5)週間以上の期待余命が必要と回答している。
私的考察
研究のアイディアとして。
(1) 根治照射で中断してしまったコホートの解析
(2) 根治照射で1年以内に死亡したコホートの解析
(3) 緩和照射の効果発現の正確な時期の予測(特に終末期)
(4) 終末期緩和照射の適応の識別(PS、照射目的など)

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