定義
生命倫理学におけるコンピテンスとは、自分自身に対するの医学的介入(検査、治療など)に関して、自分の意志を自分で判断し表明できる能力のことである。
生命倫理学者のエンゲルハートは「コンピテンスをそなえた成人の患者は、自分の関心事を自分の言葉で表現することができる。人格は自己立法者である。」と述べている。
小林亜津子によれば、コンピテンスは「尊厳をもつ自律的な人間」と「生きた屍」との境目を決める言葉である。
コンピテンスを備えていないと考えられる人の例
昏睡状態、植物状態、未成年者、重度の認知症患者、重度の精神病患者など。
実際には症例ごとに判断が必要である。
コンピテンスの判定基準
普遍的なコンセンサスを確立したコンピテンスの判定基準は存在しない。
コンピテンスの臨床基準として、バナード・ロウによる5つの構成要素が有名である。
バナード・ロウによる5つの構成要素
(1) 選択する能力とそれを相手に伝える能力があること
(2) 医学情報を理解でき、それを自分自身の問題として把握する能力があること
(3) 患者の意思決定の内容が、本人の価値観や治療目標に一致していること
(4) 決定内容が妄想や幻想の影響を受けていないこと
(5) 合理的な選択であること
(5)に関しては構成要素に含めるべきではないとの見解もある。宗教的信条に基づく決断などは、普遍的な合理性があるとは言えず、評価者により見解がわかれざるをえないためである。
参考
はじめて学ぶ生命倫理: 「いのち」は誰が決めるのか (ちくまプリマー新書)
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