過剰診断とは何か?

正しいがん検診はがん死の予防に有効です

がんによる死を避けるためには早期発見、早期治療が有効です。進行したがんは治療が難しく、また症状が出た時にはがんは進行していることも稀ではないからです。

実は、欧米ではがんによる死亡は既に頭打ち、あるいは減少しています。
一方、我が国ではがん死亡は依然として増加しています。
この差異の原因の1つと考えられているのが、がん検診の普及率の違いです。
欧米に比べ日本のがん検診の受診率はまだまだ低いのが実状です。がんの早期発見のために国はがん検診を推奨しています。

がんによる死亡を減らすメリットのあるがん検診ですが、注意点もあります。
がん検診と名のつくものなら、どれでも有効というわけではないのです。
がんの中には見つけても、治療する必要のないがんや、治療しようのないがんというのも存在するからです。
がんの種類によって、検診の方法によって、また検診を受ける方の年齢や状態によって、検診の価値は変わるものなのです。

しかし検診には過剰診断という落とし穴に注意が必要です

見つける必要のないがんを検診で見つけ出してしまうことを、医学用語で「過剰診断」と言います。
過剰診断を受けると何が起きるでしょうか?
治療する必要のないがん、つまり気付かずに放っておいても一生涯、症状を出すことのないがんの場合を考えてみましょう。(実際にそういうがんがあるのです。医学用語で「潜在がん」と名前がついています。)

多くの人にとって、がんという病名は死を連想させます、がんの宣告を受けて放ってはおけなくなります。精密検査を受け、診断が確定したら治療を受けることになります。
がんの治療は手術、放射線、抗がん剤が3本柱と言われていますが、どれも体への負担が大きい治療です。
そのつらい治療を乗り越えると、今度は何年間にもわたり、再発の不安を抱えながら経過観察の日々を過ごします。
そして治療後数年たったある日、医師からどうやらがんは消えたようだと知らされます。

長い苦労が報われた、がん検診を受けた甲斐があった、きっとそう思うことでしょう。
しかしもちろん、そうでなかったことはおわかりでしょう。

がんの治療に意味があるのは、放っておけば症状を出し、やがては死に至るようながんに対してだけなのです。
過剰診断にはやる必要のない無駄な治療(過剰治療と言います)が続くものなのです。

どんながん検診を受け、どんながん検診は避けるべきなのか、賢く両者を見分けるために、過剰診断という考え方はきっとお役にたつことでしょう。

より詳しくがん検診を知りたい方には

具体的な賢い検診の受け方を知りたい方には、以下の本がオススメです。がんについて知っておくべきことがコンパクトに整理されています。