[論文] The Impact of Iodinated Contrast Agent Administered During Preoperative Computed Tomography Scan on Body Iodine Pool in Patients with Differentiated Thyroid Cancer Preparing for Radioactive Iodine Treatment

原題

The Impact of Iodinated Contrast Agent Administered During Preoperative Computed Tomography Scan on Body Iodine Pool in Patients with Differentiated Thyroid Cancer Preparing for Radioactive Iodine Treatment

要約

背景

ヨード造影剤(ICA)に含まれるヨードはI-131と競合するため、分化型甲状腺患者のRI治療(RAIT)および診断スキャンの障害となる。
ガイドラインはICAを使用した患者においてはRAITを3-4ヶ月遅らせることを推奨している。スポット尿中のヨード濃度は体内のヨード量を反映する有用なマーカーである。DTC患者における術前CTとRAITの至適間隔を決定するため、術前CTで投与されたICAが体内のヨードプールに与える影響を調査した。

方法

RAIT目的で造影剤ありの術前CT、甲状腺全摘術、1週間のヨード制限食を行ったDTC患者を1023名を解析した。
尿中ヨード排泄(urine iodine excretion ; UIE)はスポット尿を用いてinductively coupled plasma mass spectrometoryで測定され、単純な濃度(μg/L)およびグラムクレアチニンで除した値(μg/gCr)で報告した。
患者は術前CTとスポット尿測定の間隔で5群に分けた(A 31-60 [n=29], B 61-90 [n=155], C 91-120 [n=546], D 121-150 [n=226], E 151-180 [n=67])。

結果

各グループのUIE(μg/gCre)の中央値(四分位範囲)はグループA 44.4(27.7-73.2)、グループB 33.3(22.8-64.7)、グループC 32.7(20.8-63.0)、グループD 32.0(20.6-67.0)、グループE 30.4(19.6-70.8)であった。群間に有意差はなかった。院内基準でRAITのための適切なカットオフ(<=66.2 μg/gCr)を達成した割合も群環で有意差はなかった(A 72.4%, B 76.1%, C 77.5%, D 74.8%, E 74.6%) p=0.78

結論

本研究ではDTCに対して甲状腺全摘術を受けた患者において術前CTから1ヶ月後のUIEは6ヶ月後のUIEと同等であることが示された。従って現在のガイドラインの3~4ヶ月遅らせるとの推奨は見直される必要があり、ICAとRAITの至適間隔を決定するための研究がなされるべきである。

導入

残存甲状腺あるいは甲状腺がん細胞に対するヨード取り込みを亢進させるための戦略は血清TSH(tyrotropin)の値を高めることである。これは甲状腺ホルモンの中止あるいはrhTSH(タイロゲン)の使用によて達成される。

CTのヨード造影剤には450-4200mgのヨードが含まれている。

ガイドラインではスポット尿によるヨード濃度の測定が推奨されている。

尿中ヨード/クレアチニン比は24時間蓄尿によるヨード測定の代替指標として信頼できる(11)。

結果

eGFRによるUIEに統計学的有意差はなかったが、eGRF低下にともないUIE増加する傾向はあった。eGFR<30群が4人と少なかったため統計学的有意差がつかなかった可能性がある。

考察

甲状腺ホルモン制限のために1ヶ月は必要である。従って造影剤投与の影響が1ヶ月以内に消失するとすれば、術前CTでの造影剤使用には問題がないことになる。

通常のヨード造影剤(300mg/mLのヨードを含む)100mLには3,000-45,000μgの自由ヨード(free iodine)が含まれている、これはWHOが推奨する成人の1日あたりヨード摂取量(150μg/日)の20-300倍に相当する。

Costaらの報告ではICA後、体内のヨード量がもとに戻るには、3ヶ月、場合によっては2年間必要である。ICA投与前に戻るには最低3ヶ月、ほとんどの場合6-10ヶ月を要するとの報告もある(4,18)。

ヨードは主に腎排泄である。

ATAはICA投与後数ヶ月( few months)の間隔をあけること、ヨーロッパのコンセンサスガイドラインは2~3ヶ月あけることを、その他のガイドラインの中には術前には決して造影すべきでないと推奨するものもある。

日本同様に食事からのヨード摂取量の多い韓国において、1週間のヨード制限食で十分であったと著者は報告している。

今後の臨床にむけて

  • 造影剤使用後1ヶ月で十分かもしれない。3ヶ月以上遅らせる意義は少なそうである。
  • ヨード制限食も1週間に減らせるかもしれない(ちなみにヨードライトCは1セット10食分である。1週間21食とすると約2セットを要する。)

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