認知症を患う高齢者が増えている。こうした方々は次第に自宅での生活が困難となり、施設で生活されている場合も多い。日頃こうした方々に対する訪問診療をさせて頂いているが、時にがんが強く疑われる場合がある。貧血の存在が疑うきっかけになることが多い。
がんの確定診断をつけるには、ご家族の同意を得て、ご家族の同伴のもと、検査設備のある地域の病院を受診して頂くしかない。
なかには精査を希望されない家族もいる。手術などの積極的な治療を行わないなら精査は無意味だと考える医療者もいる。確かに体力が落ちていて精査の負担が大きすぎるような場合には、精査をする必要はないであろう。
しかしそうでなければ、基本的には精査をすることが質の高い終末期医療を実践するために有意義と考えている。確定診断がつくことで、より適切な治療が可能になるからだ。
がんとわかれば医療用麻薬が使えたり、集中的な訪問診療の実施が可能になる。病気の進行具合がわかれば今後どのような症状が起きるか、どの程度の生命予後が期待できるか、予想しながら治療を進めることができる。これらの予想に基づきながら、患者さんと家族の目標と選好をお聞きすることで、最適な医療の道筋がみえてくるものである。時々は、強くがんを疑っていたが幸いにもがんでなかったということもある。
残念ながら積極的な治療を専ら行う急性期病院には、この視点が欠如していることがある。そうした環境だけで働いていると、在宅医療や緩和ケアをよく知る機会がないのである。
積極的治療の適応でないからと行ってそこで人生が終わりなわけではない。むしろ本当に大事な人生の最後の仕上げはそこからである。患者さんのご家族や急性期病院の医療者にも、こうした事情を理解して頂ければと思う。
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