[論文] A Multicenter Study of Carbon Ion Radiotherapy for Head and Neck Adenocarcinoma.

原題

Saitoh J, Koto M, Demizu Y, Suefuji H, Ohno T, Tsuji H, et al. A Multicenter Study of Carbon Ion Radiotherapy for Head and Neck Adenocarcinoma. International Journal of Radiation Oncology*Biology*Physics. 2017; doi:10.1016/j.ijrobp.2017.04.032

キーワード

頭頸部腺癌、炭素線治療

背景

頭頸部の腺癌は稀であり、これまでのところ前向き研究は存在しない。
日本における頭頸部腺癌に対する炭素線治療(carbon ion radiotherapy : C-ion RT)の効果と安全性を後ろ向きに検討した。

方法

2003年11月~2014年12月に炭素線で治療されたN0-1M0の頭頸部腺癌の患者を後ろ向きに分析した。
患者数は47名(男30名、女17名、年齢中央値60歳)。

結果

原発巣は鼻腔及び副鼻腔21名、眼窩11名、唾液腺7名、口腔及び咽頭6名、聴覚器2名。
T4(32名)、T3(6名)、T2(6名)。N0(45名)、N1(2名)。
線量分割中央値は 64.0Gy(RBE)/16Fr。
観察期間中央値は51ヶ月(範囲 6-118ヶ月)。
2yOS(87.9%)、5yOS(60.4%)。
2yLC(83.3%)、5yOS(79.3%)。
多変量解析では、手術可能であること(p=.045)、線量分割が16回であること(p=.010)がOSの良好因子であった。
G5有害事象なし。G4晩期有害事象は4名、全例とも視神経障害、全例とも上咽頭あるいは副鼻腔のT4例で手術不能な眼窩あるいは脳内浸潤を伴っていた。

結論

炭素線は優れたLCを示した。
OSにおいて炭素線単独治療は手術+X線術後照射に匹敵する。
炭素線の毒性は許容可能なものであり、患者、腫瘍の状態に関わらず、根治治療の選択肢となりうる。

背景

HN腺癌の5yOSは43-79%との報告あり[1-7]。
局所浸潤副鼻腔腺癌に対する炭素線治療の3yLCは76.9%、3yOSは59.1%。

対象と方法

2003-2014年に高度先進医療として炭素線治療を受けた頭頸部がん患者(眼窩腫瘍を含む)は980名であり、うち47名が腺癌であった。

結果

照射方法
線量増加のための第Ⅰ/II試験の結果、最適な治療スケジュールは以下のように決定された。[10,11]
1) 64Gy(RBE)/16Fr 週4回
2) 57.6Gy(RBE)/16Fr 週4回 (標的体積に皮膚あるいは粘膜が広く含まれる場合)
この研究で制約線量(limiting dose)は最大点線量で脊髄・脳幹30Gy(RBE)、視神経・視交叉40Gy(RBE)となった。
この研究以前には26分割を行っている施設も合った。
予防的頸部照射はなし。

有害事象

失明発症時期の中央値は30.5ヶ月(範囲 19-62ヶ月)
視神経障害以外のT3有害事象は顎骨壊死(n=2)、脳損傷(n=1)、三叉神経障害(n=1)、中耳炎(n=1)。

考察

本研究の60%がインオペであったが、5yOSは60%であった。
HN腺癌のOS予後因子としては、T4、N(+)、脳あるいは硬膜浸潤、不動性の腫瘍あるいは急速な増殖、断端陽性、年齢(65歳以上)などが報告されている。[1,7,13]。
5yOS 16Fr 69.4%、26Fr 22.9%。26Frの方が相対線量は高かった(65Gy vs 72.2Gy)。但し26Frを受けた7名中局所再発は1名のみ、5名に遠隔転移が満たれた。機序は不明。

炭素線の有害事象の予測因子
視神経: RBE 52-57Gy [15,16]
顎骨壊死:PTV内に歯が存在していること、上顎骨線量が 50Gy(RBE)以上 16Frプロトコルで[17]。顎骨壊死は照射による歯肉後退の結果として生じる[18]。
脳:40Gy(RBE)が7.6ml以上、50Gy(RBE)が4.6ml以上。

コメント