訪問診療の初診時に心がけることの一つは内服薬の整理である。要するに前医で飲んでいた薬の数を減らすことである。
高齢者は通院を重ねる内に次第に薬が増えていき、訪問診療に辿り着く頃にはかなりの数になっていることが多い。これは多剤併用(polypharmacy)と言う医学的問題である。なぜなら薬は飲めば飲むほど副作用の確率が高まるからだ。数種類以上の薬を飲み合わせるとどういうことが起きるのか。正確なところは実は誰にもわからないのが現実である。
日常臨床をしていると、内服薬を積極的に整理する医師は実際問題として少ないのだろうと考えざるを得ない。
理由としては、患者さんやその家族の中には薬を減らされることを嫌がる人がいるということがあるだろう。薬を飲んでいる=安心、という思い込みである。そう思うからこそこれまで薬を飲んできたわけで、今まで飲んできたのは無駄だったんですよ、と言われることに心理的抵抗があることは理解できる。しかし残念ながらそういうことは少なくない。薬=安心という思い込みは、実際には自分たちを害する可能性が高い。
薬を減らすより増やす方が、心理的な負担が少ない医師もいるのだろう。薬をやめると症状がぶり返すリスクがある。薬を始めた経緯が不明になっているのがむしろ通常だから、それを心配する気持ちはわかる。一方、薬を追加する時にも副作用のリスクはあるが、何かの症状があって出すのだから期待されるメリットは確実に存在する。薬をやめるメリットは薬をやめられることだけであるから、薬を追加することの方がやりやすいと感じる医師がいても不思議ではない。個人的には逆であるが。
では薬の種類はどのくらいに絞ればいいのか。原則的には内服薬は5つ以内、処方箋で言えば1枚に入るくらいが望ましいと考えている。実際にはそうはできないことも稀ではないが。
典型的な無駄な内服のパターンをいくつが挙げてみる。
パターン1:同効薬を無駄に重ねて飲んでいる。
胃薬、便秘薬、睡眠薬などで複数の種類を無駄に飲んでいることが多い。
パターン2:薬が効きすぎている。
高尿酸血症の薬を飲んでいるが尿酸値が正常値以下になっている、 高脂血症の薬を飲んでコレステロールの値が正常値以下になっているなどはしばしば目にする。さすがに糖尿病でHbA1cが正常値以下という稀であるが。
パターン3:効果不明な薬を延々飲んでいる。
鎮痛薬を飲んでいるが、もはや何が痛くて飲んでいるのかわからない。メチコバールなどのビタミン剤を飲んでいるがもはや何が目的かわからないなどの例である。
パターン4:一時は必要であったがもはや必要性のなくなった薬を飲み続けている。
精神科系の薬に多い。眠れなかった時に出された睡眠薬や、せん妄の時に出された抗精神病薬を、もはや必要がないのに飲み続けているようなケースである。
内服薬の整理は医師の責任であるが、実際には自衛のために患者さんとその家族は自分がどんな薬を何の目的で飲んでいるのかを可能な限り理解し、本当に必要なのか疑問があれば主治医に積極的に尋ねてみるべきだろうと思う。
コメント