脳転移の保存治療(薬物治療)

処方例(My Recipe)

軽症の場合

リンデロン 2mg1x 朝 or リンデロン 1mg1x 朝

パリエット(10) 1T1X 朝

メニレットゼリー(30g製剤) 1日3個/分3

症状が強い場合は、ステロイドのパルスやグリセオール注などを考慮。

病態生理と治療戦略

転移性脳腫瘍の治療目標は、浮腫改善による頭蓋内圧亢進症状の予防・緩和である。

脳浮腫には(1)vasogenic edema、(2)cytotoxic edemaの2つの機序がある。

転移性脳腫瘍による脳浮腫は(1)vasogenic edemaである。

vasogenic edemaの病態整理は2段階から成る:(1) BBBの破綻 →  (2)破綻したBBBから血漿成分の間質への滲出

治療もこの2つのそれぞれの段階に対応する。

(1) BBBの破綻 → ステロイドによるBBBの修復
(2) 破綻したBBBから血漿成分の間質への滲出 → 浸透圧利尿薬による血漿成分の排出

従ってステロイドは主に予防であり、浸透圧利尿薬が既に存在する浮腫の排出を担う。

浸透圧利尿薬の方が即効性があるが、心腎負荷が大きい、投与後のリバウンド現象がある、などの問題があり全例に使用できるわけではない。

治療の実際

ステロイド

脳腫瘍領域では、グルココルチコイド作用が強く、ミネラルコルチコイド作用を有しないベタメタゾン(リンデロン)、デキサメタゾン(デカドロン)が頻用される。
各種ステロイドの比較表

一般名 商品名 ヒドロコルチゾンを1とした力価(*) 生物学的半減期
ヒドロコルチゾン ハイドロコートン 1 8-12時間
プレドニゾロン プレドニン 4 12-36時間
メチルプレドニゾロン ソル・メドロール 5 12-36時間
ベタメタゾン リンデロン 25 36-54時間
デキサメタゾン デカドロン 25 36-54時間

*力価はグルココルチコイド作用の比較

投与は本来は生体リズムにあわせた朝1回投与が望ましいが、分割投与の方が効果発現は早い。

ステロイドの副作用と対応

副作用 対応
消化性潰瘍 抗潰瘍薬併用
糖尿病 血糖測定
感染症 プレドニン10mg/日以下、3週間以内は感染リスクは少ない。
プレドニン20mg/日以上、2-3週間以上で感染リスクが高い → ST合剤などの予防的投与が望ましい。
骨粗鬆症 3ヶ月以上の長期投与では骨粗鬆症ガイドラインに準じた対応を考慮。
静脈血栓 PE-DVTのリスクを念頭におく
精神症状 原則として1日1回朝投与とする。不眠症など出現すれば適宜対応。

投与例(リンデロン使用例)

時期 投与量
1-2日目 8-12mg/分1-2
3-4日目 6-8mg/分1-2
5-6日目 4-6mg/分1-2
7-8日目 2-4mg/分1-2
9-10日目以降(維持量) 1-2mg分1

脳転移による症状が軽度の場合は維持量で開始する。維持量はリンデロンなら1-2mgが適当。

早急に浮腫改善が必要な場合はパルス療法を行う。その場合、注射薬で開始 → 1周間程度で徐々に内服に切り替える。初回投与量は症例に応じて増減する。いずれにせよ1週間程度で維持量に移行すべき。

浸透圧利尿薬

注射薬と内服薬がある。
注射薬:濃グリセリン(グリセオール注)、D-マンニトール(20%マンニトール注射液「YD」)がある。
内服薬:イソソルビドゼリー(メニレット70%ゼリー)、イソソルビド(イソバイドシロップ70%)

D-マンニトールの方が即効性があるが、リバウンド出現も早い → 手術前の時間稼ぎがメイン
保存治療としてはグリセオールが一般的。グリセオールはナトリウム含有量が多く、心機能不良例、腎機能障害例では要注意。

イソソルビドは苦味が強く飲みにくい。イソソルビドゼリーには専用フレーバあり。専用フレーバーでなくてもコーヒーフレッシュ、アイスクリーム、ヨーグルト、マーマレード、ココアパウダーなどでの味付けも可。副作用は悪心・嘔吐、下痢など。

使用例

メニレットゼリー(30g製剤)1日3個/分3が一般的。

イソバイドシロップ、メニレットゼリーは1日量70-140gを分2~3。

グリセオール注 1日200mLx2~4回(1回投与時間は60分前後、1日5回(200mL製剤の場合)程度まで投与可能)

参考文献

転移性脳腫瘍 診断・治療・管理マニュアル: がん治療にかかわる医療従事者必携

 

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