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頭頸部の再発および二次原発扁平上皮癌:いつどのように再照射するか?
頭頸部がんの再発、二次発がん
- MACH-NCデータベース(50のcCRTと30の導入ケモ研究のメタアナリシス)によると、5年後の局所再発率、領域再発率はコントロール群で50.8%と47.5%、コントール群で60.1%と46.5%[2] → 5yで半分再発する
- 健康状態などを加味すると、再発患者のうち、救済手術あるいはその他の根治治療の候補たりうるものは半分以下である[3-6]
+ RTOGがん登録の前向きに登録された患者2066名のうち、過去/同時がんがない、RT単独治療を受けた患者のうち治療後半年でがんが確認されなかったものは601名。 - この人達のRT開始後3,5,8年後の2次発がん推定リスクはそれぞれ9%,14%,23%。
- フロリダ大学の1112名の根治RTを受けた最低2年追跡されあtHNSCC患者では、RT後0.6-21.7年で9%が新たなHNSCCを発症した。原発部位別にみた5年後の二次原発がんの発症率は、中咽頭、下咽頭、声門でそれぞれ11%,12%,3%であった。
- MD Andersonの1292人のHNSCC患者(治療を完遂した)のうち3.4%がHNSCCとして二次発がんを発症した。これはこのコホート中の二次発がんの36.7%に相当した[8]。
治療戦略
- 救済術後5年生存率は39% [11]
- 特に喉頭がんの再発は他の部位の再発に較べて救済術後の予後良好である。しかし再発時のステージの方が重要である。
- 再発後の化学療法単独治療は緩和目的にとどまる
- 再発後のケモ単独では、プラチナ/5FUにセツキシマブを上乗せすることで生存期間が7.4ヶ月から10.1ヶ月に延長した [HR 0.80, p=.04] [13]
- 再発/遠隔転移HNSCCでは、プラチナベースのコンビネーションケモで5年生存率はわずか3.5% [14]
- 切除不能HNSCCに対する、ケモ同時併用再照射にはQALY 5週間分のメリットがある [15]
救済術後の再照射(先行研究の知見まとめ)
- 断端陽性、節外浸潤陽性の高リスク患者に絞って再照射を検討すべき
- Grade3以上の晩期障害が1/3以上に発生した
- 治療関連死が~8%ある
- 2年後OS 40-50%が期待できる
- 救済手術単独に比べ、再照射を加えることで、LRCとDFSは改善するがOSは改善しない
救済手術不能例に対する再照射(先行研究の知見まとめ)
- 再照射後2年で、1/4~1/3の患者が局所領域腫瘍フリー
- 長期生存者は稀であるが、2年生存率は10-30%が期待できる
- ~40%の患者にGrade3以上の晩期有害事象が生じる
- 約10%に治療関連死が生じる
照射方法
- RT後の造影CTの領域転移の陰性予測率は94%以上
- RT後はリンパ流が変わる可能性がある
- 局所/領域救済治療後の患者の局所再発/遠隔転移の発症率は高い
- 局所領域再発及び二次原発がんの発生は、遠隔転移の高リスク因子である
- 非PET-CT治療計画では44人中25名に局所再発あり、11人がin-field(再発腫瘍の20%以上がGTV内)、4名がmarginal(再発腫瘍の20%未満がGTV内、GTV1cm以内に最近接縁あり)
- PET治療計画群では、16/45人に局所再発があり、6/16のみがmarginal再発
- 非PET-CT治療計画ではCTVマージン0~5mmに増やすことで、再発体積のカバレッジは11.7%~48.2%に改善した
- PET-CT治療計画ではCTVマージン0~5mmに増やすことで、再発体積のカバレッジは45%~93.6%に改善した
- 非PETとPETでは腫瘍体積には大差はなく、むしろ位置がずれるけいこうがあった。
予防域
+ シナリオ1:孤立した局所再発、cN0に対して予防領域治療後
基本的には予防リンパ節領域転移はまれなので照射不要
rT3-4の声門下咽頭がん患者の場合は、予防域照射のメリットがあるかもしれない
+ シナリオ2:孤立した局所再発、初回治療でN+を治療済み
予防領域照射を検討してもよいかもしれない
+ シナリオ3:孤立した領域再発
手術結果よび初回RTの方法に応じて、再発リンパレベルのみ
切除不能頸部腫瘍では、GTV+マージン 前回RTの高線領域にアダプトさせながら
再照射後の有害事象
- 急性期有害事象は初回RTと大差ない
- 晩期有害事象は有意に増加する
- 脊髄は45Gy/30Fr後の再照射で25Gy/30Frを耐用できる [87]
- 頸動脈破裂は 2.6%、再照射後の発生期間中央値は 7.5ヶ月、76%は致死的 [90]
- 頸動脈破裂はhyperfractionationで多い conventional vs hyper (1.3% vs 4.5% p=.002)
- 嚥下障害 ~ 50% [27,48,67,91]
- 顎骨壊死 ~10% [36,84,91]
ケモ併用
- 初回照射の場合は、ケモ併用は生存に対して6%の上乗せ効果がある
予後予測因子
- OSに対して:救済手術(再照射前、HR=0.52,p=.0006)、先行するCRT(HR=1.83,p=.0043)、RT線量60Gy以上(HR 0.35, p<.0001)、初回RT後の経過時間36ヶ月以上(HR 0.64, p=.0259) [91]
- リスク因子で患者を層別化すると、予後良好群の5生率は30%(負の予後因子0-1個)、負の予後因子3-4個では5年以内に全員死亡
- 有意な合併症および臓器不全がある場合、長期生存者はいない(mOS 5.5ヶ月 vs 59.5ヶ月、両方の因子がない群)[84]
著者のオススメ
1. 適切な患者選択(適応判断)が最も重要
– 重篤な合併症がないこと、初回RTの重篤な有害事象がないこと、が再照射の条件である
– 可能なら、標準化尺度であるCharlson commobidity index あるいは ACE-27を使用して評価すること
– その他の考慮すべき予後因子は、孤発頸部再発の存在、腫瘍の大きさ、初回RTからの経過時間
– これらの因子も考慮したノモグラムがあるので活用が望まれる[84]
2. 可能なら救済手術が第一選択である(根治性に優れる)
術後再発高リスク患者(断端陽性、節外浸潤陽性)は、術後照射により、生存期間延長のメリットはないが、有害事象の発生が高まるリスクと引き換えに局所制御率を改善できることを知らされるべき
3. 再照射の際にはIMRT、SBRTなどの新技術が推奨される
– 新技術のOSへの有意な影響はないが、局所制御を高め、有害事象を減らすことが期待される
4. 脊髄のサブクリニカルなダメージは有意に回復する。
– 1日2Gy の脊髄全断面に対する再照射の場合、初回照射から6ヶ月後で25%以上、1年以降で50%の回復が期待される[63
5. 60Gy以上の線量が推奨される。
– コンベンショナル分割(1.8-2Gy/fx)、ハイパー、ハイポ(SBRTの場合)いずれもありうる
– PET-CTによるコンツーリングが望ましい
– CTVマージンは最大5mm程度まで
– 予防リンパ節領域照射はほとんどの場合、必要なし
6. ケモ(あるいはセツキシマブ)の上乗せ効果は、初回と同程度と期待される
7. 救済手術あるいは積極的な再照射の適応にならない場合、緩和治療あるいはBSCが適切な選択肢である
8. 可能なら全ての患者が臨床研究に参加すべき。知識の欠如が大きい領域は、患者選別(適応)と放射線治療法およびケモのプロトコルである。
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