NHKのプロフェッショナル仕事の流儀という番組で「将棋棋士 羽生善治 vs 森内俊之」(2008年)という放送があった。この中で強い印象に残ったのは、途中1敗を喫した森内プロが敗戦のショックで数日盤面に向かえなかったというくだりである。これほどのプロでも、シリーズ途中の1つの敗戦でそこまでショックを受けるものなのかと思った。
一方、人間とコンピュータの頂上対決である電脳戦が今年2017年をもって終わるらしい。
主催者であるドワンゴの川上会長によれば「人間とコンピューターの関係を示すイベントと思ってやってきた。役割は終わったと考えた」ことが理由だそうだ。確かに年々、急速かつ確実に強くなっていくコンピュータ相手に人間が勝つのはもう難しいだろう。要するに勝負にならなくなってきている。
人間とコンピュータでは学習や記憶のメカニズムが全く違うので単純な比較は勿論意味をなさない。とは言え先の森内プロと現在の電脳戦をみて思うのは、コンピュータの強さというのは、負けても全く自尊感情ややる気に影響を受けないことにもあると思った。
人間との対決においてはコンピュータも当然敗戦を経験してきた。しかしコンピュータは敗戦してもショックなど受けるわけもなく、直後から原因の分析と次回の改善に向けて淡々と計算を開始する。
人間においては自信や自尊感情というものがやる気と分かちがたく結びついており、これを超越することはできない。積極的に物事を学んだり訓練を積むためには、自信や自尊感情と結びついたやる気こそ原動力だろう。しかしこの人間の心のメカニズムは、敗北や失敗の時にはマイナスに作用してしまう面を持つ。
敗北の時、挫折感に打ちのめされるのではなく、淡々と現実の問題の分析と解决にあえて取り組む。時にはそういうメンタルの持ち方が強くなるために必要なのではないかと考えさせられた。


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